先生のお見舞い ②
珠洲たちの学校の様子を聞いてほっとした。
地衣も、珠洲もお互いの進路に向けて頑張っているらしい。私も頑張らないとと思うけれど……。
「もう受験勉強とか始めないといけないんですよね」
「広瀬の場合無理だろう……」
「学校に行けてないから今どこらへんやってるのかノートでしか把握できないの辛いですわ……」
教師の解説も一切ない。
私は教科書を読んで自分で読解しながら進めている。もはや独学で学んでいるに近かった。おかげで私の教科書は少ししわくちゃだし、カラーペンでめちゃくちゃ汚れている。
どこをやってるかわからないのでがむしゃらに進めているんだけどさ……。
「今ここで簡易テストでもしてみるか?」
「いいんですか?」
「今やってるところだから習ってないと難しいと思うが……広瀬ならできるだろう」
「やりますやります」
先生がカバンから紙を取り出す。
テストの紙だった。先生の目の前でそれを解く。あ、これやった。めっちゃ苦戦したけれど必死こいて覚えたやつだ。
すらすらと解けていく。ふっ……独学をなめるな。
そしてあっという間に解き終わる。
「……なんで解けるんだよ」
「……いやぁ、自分でやった範囲なんで」
「もうこれ先生いらねえだろ……。96点だ」
くっ……何問かわかんない奴があったから仕方ない。
でも、自分で勉強してもそれぐらいは取れるんだな。自分の実力を図るいい機会だ。テストっていうのは。
自分がどれくらいできているかを図るのがテストだと思ってる。
「本当になんでできるのかが疑問だ……。広瀬は受験心配はないな。怪我ぐらいしか心配はないだろう」
「試験は10月でしたっけ? それぐらいなら治ってそうですよ」
「今はまああと五か月あるから大丈夫だろう」
それまでにはきっと治ってるさ。たぶん。
「広瀬。頑張れよ」
「わかってますよ。精一杯やりますから」
「……広瀬って頑張ればなんでもできそうだな」
「いやいや、何でもは無理ですからね?」
将来絶対つきたくない職業に関しての努力はしたくないしやりたくもない。
基本的にやらなきゃいけないことは頑張るけれどやらなくていいことは頑張らない。最低限必要なものだけは頑張るからな。
全部頑張ってたらそれこそ疲れる。
「頑張るのは最低限ですよ。意味もないことに努力はしたくないですから」
「今は意味なくてものちのち意味があるようにもなるさ。今はがむしゃらに頑張っとけ」
「そういうもんですかね」
「……ま、大半は本当に要らないがな」
「ええ……」
「だがまぁ、頑張ることに意味はいらないだろう。結果がどうであれ頑張ったという結果だけは誇れるからな」
「そこ、普通先生なら頑張ったら報われるとかいうのでは?」
「世の中そんな甘くないだろう? 現実を見せるのも教師だ」
「うわ……」
先生は立ち上がる。
「ま、先生はこれで帰るとするよ。また見舞にくる。じゃあな」
「あ、はい。ありがとうございました」
先生は帰っていった。