先生のお見舞い ①
お父さん、お母さんたちにキレたことは間違いじゃなかったと今でも私は思う。
ほとぼりが冷め、冷静になってそんなことを考えた。私は悪くないとは言わないけれど、私だって怒る権利はある。あそこまで怒りが湧いたのは久しぶりかもしれない。
親であるから育ててくれた感謝もある。
でも、怒った。育ててくれた親にいらないって告げる私はきっと最低なんだろうけれど、後悔はしていない。後悔するつもりもない。
迷惑は絶対にこれ以上かけないようにしよう。意地でもそうしてやる。それが私ができる唯一の報復だ。さすがに大学進学とかで入学金とかは出してもらうけどそれ以外は絶対に迷惑かけないようにしてやる。迷惑をかけろと言われたがそうはいくものか。
ちょっとした反抗期だ。
私は大人になる。今の私も十分に子供っぽい。
なんでもは厳しいかもしれないけれど自分のことは自分でしよう。
「失礼するぞ。広瀬、いるか?」
「あ、先生?」
「元気そうだな。広瀬、面会にきてやったぞ」
「ありがとうございます」
先生は椅子に座る。
カバンを手に持ち、私の傍らに座った。
「今日来たのは進路の相談も含めてだ」
「進路……。はい」
「広瀬は体育大学にいくんだったな?」
「体育教師になりたいので」
「そうか。なら、オープンキャンパスとか一度見に行けとも言いたかったがそれじゃ無理そうだから私が代わりにいってきて映像を撮ってきた。暇なときに見なさい」
と、DVDを渡される。
「先生……DVDを読み込むやつありません……」
「ジョークだ」
「ジョークかい!」
DVDを返し、もらったのはビデオカメラ。まあ見る機械がないからこれが一番手っ取り早いだろうな。
「ありがとうございます」
「いやいや。どうってことないよ。それより怪我はどうだい? 順調に回復してるかい?」
「まだ動かしたら痛いんで治ってる感覚がないですね」
「そうかい。早く良くなるといいな」
「早く治ってほしいものです」
動けないのは辛いからな。
「それより先生、最近学校で珠洲たちとかどうしてます?」
「葉隠は真面目に勉強に取り組んでるな。放課後残って先生にわからないところを聞きに来ている。あいつも危機感を感じてるんだろうし褒めてやるべきだな」
「よかったです」
珠洲は真面目にしている。
それだけ聞いてほっとした。以前の珠洲なら三日坊主ですぐにやめていたけれど今回は決意が固い。少し信用はできなかったけれどそれを聞いて安心した。
「北海道の大学受けるって聞いた時は驚いたがアイツなりの考えもあるんだと感心した」
「そういえばそうでしたね」
「みんな、大人になっていくんだな。寂しい気持ちがある」
「いつまでも子供のままではいられませんから。大人にならないと困るんですよ」
「だよな。今までクラスをもったことはあるが一番広瀬が大人だからな……。高校生の考えじゃないぞ」
「そうですか?」
そういう風には思わないけれどな。
「妙に達観しているしな。落ち着きもあってもはや先生の間でも生徒っていうより大人を相手しているって言っている」
「ええ……。まだまだ私は子供ですけど……」
「お前はもう大人だよ……」
先生が呆れたような声をだした。
自己制御もできて達観している。美咲ちゃんは周りから見ると十分に大人に見えてます。




