女子っぽく?
お父さんたちは帰っていった。
「……昔なんかあったの?」
「まあ、ちょっとね」
真綾が訊ねてきたのでそう返す。
深い事情があるんです。少しばかり怒りを覚えたけれどまぁ、落ち着こう。私は大人になるからもうこれごときで怒るわけにはいかない。
……本音ぶちまけたの子供っぽかったかな。感情に身を任せていたのはちょっとあれだったな。大人にならなきゃ。
「まぁともかくさ、なにがあったかわからないけど美咲。その顔どうにかしなよ」
「えっ?」
「寝ぐせすごいしなにより目やにとか……」
うわ、ほんとだ。
触ってみるとわかるけど寝ぐせすごいな……。髪の毛切ってないからどんどん伸びてくし。私ロングにしたくないんだけどなぁ。どちからというとボブみたいな短い系のほうが好きなんだけど。
「そろそろ髪切りたいなぁ」
「……美咲ってロングにはしないんだ」
「まぁ似合わないし動きづらいし」
「ロングのほうが似合うと思うけど」
「いやいやいや。そう思ってかつら被って鏡で見たけど……あれはない」
あれはないわ。いや、まじで。
似合わない。やっぱり肩までぐらいがちょうどいい感じかな。
「そう? 私は似合うと思うけど。でも、たしかに前髪長いね」
「うん。目に入って邪魔。ぱっつんといきたい」
「……美咲って女子みたいに美に頓着してないよね」
「まぁ、動きたい方ですから」
見た目より実用性のほうが重視するかな。
だって体動かしてたら服とか汚れるのは当たり前だし髪だって長いと本当にうざったくて仕方ない。制服着るときとか大変だしな。
「あまり美に執着しないかなぁ……。ファッションとかそれほど気にしてないし」
「そう。それをモデルの前でいうのはすごいと思うケド」
「……あっ」
「忘れてたみたいだね……。ま、いいけどさ」
でも私の感性は本当にこんなんだし。
最低限恥ずかしくない格好出来ればいい程度にしか思ってないのは本当だしなぁ。こう、コーディネートは苦手だし自分を美しく飾ることに不満があるというか……。
おしゃれはそんなしたくないんです。はい。
「美咲って変なところで女子っぽいのを求めるくせに性格そんな女子っぽくないよね」
「……ぐぅ」
ぐうの音しかでない!
たしかにおっぱいは欲しい。むしろそこだけ欲しがってる!? 真綾の正論で耳が痛いよ……。うぐぐ……。
女子っぽくしたほうがいいんだろうか。大人になるだけじゃなくて女子っぽくなる……? ファッションとかに気を使うくらいならもっと別のところに使いたい気はするけど……。
「……もっと女子っぽいほうがいい?」
「いや、別に今のままのほうが付き合いやすいからいいけど」
「そ、そう? 信じるよ?」
今のままでいい……。そうするよ?
スイッチの切り替え速度が速すぎる。
でも自分を肯定してくれる存在は大切ですね。




