美咲の心
『本当死んじゃえ!』
美鈴がそう私に言ってきた。
美鈴は学校で自殺者の妹だって言われてるらしい。私のせいで迷惑をかけた。そのことが私を苛んでいる。
『死んでもいないのにそうレッテル張ってくるのがうざい! いっそ本当のことになってたらよかったんだよ!』
美鈴はそういった。
私は、その時決意した。ダメダメなお姉ちゃんだからこそ、やれることはやっておきたい。美鈴の為になるんなら、私は死んであげようと思った。
そこから、私の意思は固かった。遺書を書き記し、机の上に置いておく。そして、いってきますと静かに告げて自転車にまたがり橋の上にいく。
橋の上に立つと風が強く吹いてきた。まるでやめろと引きとめんばかりの勢いだ。
私は真下を見下ろした。昨日の大雨で増えた川の水。冷たそうだ。
『バイバイ』
私はそういって身を投げ出した――
思い出した。
今の時刻は3時だった。自殺したときの映像が鮮明に夢として流れてきた。そして、すべて思い出した。二回目の自殺した理由。美鈴に望まれてたから……。
私は、苦笑いを浮かべた。いや、苦笑いというより、嫌われていたということに気づかなかった今までの自分に対する嘲笑といったほうがいいのかもしれない。
そうだ。私と、美鈴の間には仲の良さなんて、なかったんだ。記憶喪失をいいことにそう思い込んでいただけだったんだ。
なんて愚かなんだろう。
今の美鈴が優しいのはきっと罪悪感からだけだ。本音では嫌っている。
「ほんっと……バカだ」
嫌われてることにも気づかずのうのうと生きていた自分が恥ずかしい。
「まぁ、仕方ないか。自殺したってことで迷惑をかけたし、そもそも二回目も死ねなかったからどっちにしろ迷惑かけたか」
あの時はたしか偶然散歩に来ていたガタイのいいお兄さんが助けてくれたんだっけか。
助けてくれなかったら、今頃成功してたんだろうな。ああ、成功してればよかったのに。そうすればこんな惨めな気持ちにならなくて済んだんだよ。
改めて、私は死にたい――と願った。
その願いは誰に届くわけでもなくただただ虚空に消えていく。
怒りは不思議とわかない。美鈴は迷惑かけられた方で何も悪くないからだ。死んでしまえって思うことは姉妹間でもよくあることだろうし気にすることでもない。むしろ、本気で捉えた私が悪いのだ。
謝っても謝り切れない。
「本当、私は惨めだなぁ……。味方って私には本当にいるのかな。美鈴がこんなんだと誰も信じられなくなりそうだ」
真綾も、真野ちゃんも、珠洲も、地衣も。
みんなみんな仲良く見えたのは私が見ていたまやかしなんだろうか。冷酷な月が見せた幻想なんだろうか。幻想の曲の上で私は踊らされていたんだろうか。
……ああ、もう、本当に自分が嫌いだ。