美鈴の懺悔
私が部屋を掃除していると押し入れの中から手紙らしきものがみつかった。
遺書、と書かれているもの。私は中を読んでみた。
『この度、私は自殺を決意しました。
誰が悪いわけでもありません。自分の弱さ、惨めさが引き起こしたものです。
美鈴は学校で自殺した姉の妹というレッテルを張られて苦しんでいるそうです。
申し訳ないことをしました。
贖罪といってはなんですが、美鈴が言った通り死んで本当のことにしてあげたいと思います。
お姉ちゃんですから。妹のためなら大丈夫です。心配はしないでください。
私が死んで哀しむ人はいません。美鈴も、母も、父も。誰もが望んでいます。望まれて死ねるのなら本望です。ありがとうございました。望まれて死んでいく私をどうか笑顔で見送ってください。私はあなたがたを恨みません。
長くなりました。美鈴はきちんと生きてください。私みたいに弱っちい人生を歩まず、私のような弱者にはならないでくださいね。
今までありがとう。お母さん、お父さん。美鈴。そして珠洲。ありがとね』
と、お姉ちゃんの字で綴られていた。
私は、思わずくしゃりと潰してしまう。余計に思い出してしまった。お姉ちゃんが中二の時……これを書いて死のうとした。橋から飛び降りた。これが見つかったのはお姉ちゃんの部屋からだった。
これを家族で読んで、私たちは自分も加害者だったんだと初めて気づいた。家族三人、後悔の念が押し寄せていた。だからこそお姉ちゃんには甘くしていたんだろう。
私が好きなのもこの罪悪感から……。最初は罪悪感からだったけど、今は違う。本当にお姉ちゃんが好きだ。だからこそ、辛いものがある。
もしも過去の自分に会えるのなら、ぶん殴ってやりたくらいだ。甘ったれたこと言うな、ワガママ言うなってぶっ飛ばしたい。
「ごめんなさい……」
涙が頬を伝う。
お姉ちゃんはきっともう少しであの時の記憶が蘇る。何となくそう思っていた。この時の記憶を思い出したら、お姉ちゃんはどう思うんだろう。
怒ってくれたらいいんだけどな。人に死ねとか死んじゃえとか簡単に言うなって叱ってくれたら楽なんだ。でも、お姉ちゃんは叱らない。寧ろ、笑顔で謝ってくると思う。
そんなの許せない。
悪いのは私たちなのにさ、お姉ちゃんが謝るなんてダメだよ。
つくづく思う。私もいけないことをしたんだって。やっちゃいけないことをしたんだって。
お姉ちゃんは、このことを一生許さないでいてほしい。罰を与えてほしい。お姉ちゃんがそんなんだと私はのうのうと生きることができないから。罪の意識を背負ったまま生きていく。そんな勇気は私にはない。
私の頬に伝う涙はしばらく止まることはなかった。




