おじさんの父
携帯を眺める。
『明日、真司さんたちをつれてお見舞いに行きます』
叔母さんからそうメールがあった。
手の届く範囲を片付ける。ヘッドギアを机の上に置き、蜜柑ちゃん達が来るのを待つことにした。真綾は携帯をいじっていて、時折笑っている。
「美咲ちゃーん。来たよ」
「叔母さん。こっちです」
叔母さんが私のところに近づいてくる。大翔くんと蜜柑ちゃんもその後ろに立っており、そしてその背後には真司さんと誰か知らない人が二人立っていた。
え、誰。
「ほら、困惑したじゃないか……」
「再婚相手の伯母の娘がどんな子か知りたいじゃない」
「そうだ。大翔や蜜柑も仲良さそうにしている子がどんな子か確かめなければなるまい」
「美咲ちゃんはいい子だって言ってるだろう」
うーん。こう話してる姿を見るに……。
「真司さんのご両親の方?」
「あ、ああ。真司の父の源六という。こっちは妻の春乃」
「よろしくお願いしますね、美咲さん」
怖そうな顔のおじいさんに優しそうなおばあさん。
むすっとした顔のおじいさんは叔母さんがさしだした椅子に無言で座る。うーん……ちょっと怖い。とっつきにくいっていうか、なんか怖くて委縮してしまうな……。
「それにしても両足骨折って何をしたの?」
「えっと、三階から一階に落ちたっていうか」
「よく死ななかったね……」
「上手く体ひねりましたから」
真っ逆さまで落下していくのをぐるんと回転させて足で着地した。さすがに私の身体能力をもってしてもきついものがあったし、子どもを抱えてたから余計にきつかった。死ぬかと思ったけど……。三階から落下した程度で人は死ぬのかな……?
「あ、これお見舞い。美咲ちゃんの大好きなイチゴ大福」
「あ、ありがとう! これ好きなんだ」
イチゴ屋のイチゴ大福。
イチゴをあんこにし、それを中に包む。さらにイチゴも一緒につつんでザ・イチゴ大福っていう感じのイチゴ大福。これ好きなんだよ。叔母さんがよく買ってきてくれるこの大福。これが一番の楽しみだぁね……。
早速一個食べることにした。
「うん、皮もちもち! 美味しい!」
「本当に好きだね~」
「昔からこれが楽しみだったんだ」
ぺろりと一個平らげた。
「おじいさん。そろそろ気持ちをリラックスさせないと。怖がってますよ」
「わかっておる。その、わしが人見知りするの知っているだろう」
「わかってますけどそんな仏頂面じゃ話しかけてくれませんよ」
隣ではそんな会話をしていた。
人見知り……?
「あー、美咲さん」
「はい? なんでしょう」
「こ、これからも蜜柑と大翔をよろしく頼む」
「あ、はい。わかりました」
大翔くんはベッドに座り、ゲームでこんなの手に入れたよって自慢する。蜜柑ちゃんは私を微笑んでみている。
おじいさんたちいい人だなぁ。真司さんもいい人だし。いい人の家系なんだろうか?