春香のお見舞い
真綾が眠そうにあくびをしていた。
「久しぶりにゆっくり眠れた気がする」
「最近仕事忙しかったの?」
「それなりには。売れてきたしスケジュールも結構埋まってる。この怪我のおかげでパァなんだけどさ」
「あー……」
真綾はスケジュール帳を放り出した。
まぁ、その怪我だと無理そうだしね。嫌でも活動休止にならなきゃいけない。最近真綾もテレビで見る機会が増えてるのに今こういうことされると真綾の芸能生活にも響くんじゃないだろうか。
真綾はベッドに寝転がった。
「……しりとりでもする?」
「……暇なの?」
「うん」
することなにもないもんな。
一種の拷問に近いよ。
「じゃあする? りからね」
「りんご」
定番だな……。
「ごりら」「らっぱ」「パナソニック」「クリスマス」「スイカ」「カラス」「す、スカンク」「クラス」「す……煤」「すすきの」「の、のはら」
しりとりが続いていく。
すると、病室の扉が開かれた。
「元気してるかね? 真綾!」
「ハルカ……」
モデルの深間 春香が遊びに来たのだった。
ハルカを見るのも随分と久しぶりな気がする。真綾はゲームでよく見てたしたまにお見舞い来てくれてたけどハルカは特に何も関わらなかったし印象が薄い。モデルなだけあってスタイルと顔はいいけど。
真綾がいうには天然……っていう話だっけ。
「これお見舞いだゾ!」
と、手渡してきたのはエロ本だった。
私は思わず吹き出してしまう。表紙には「セクシーな人妻特集」と書いてある。それR18だし、私たちそこまで興味ない……。
真綾は春香を睨んだ。
「いやぁ、真綾お母さん好きだっていうからこれにしたんだよ!」
「……お母さんの意味をはき違えてるなこりゃ」
多分春香が言ってるのはお母さんという立場にいる人の事全員を指してる。だからこそ、こんな人妻特集とかいうエロ本を持ってくる。というか、これどこで手にしたんだよ。コンビニで買えないしそもそも女子がエロ本を持ってくるってどうなのよ?
これも計算か? 計算して天然にみせてる小悪魔?
「……言っておくけどハルカはキャラで天然なわけじゃなくて素で天然だから」
私の心を読んだかのように答える。
素でこれをもってくるとは頭おかしいんじゃないだろうか。
「まあいいよ。気持ちだけ有難く受け取る。それは戻してきなさい」
「お兄ちゃんに返してくるね」
「それお兄ちゃんのかい!」
お兄ちゃん人妻が好きなんだろうか。う、うーん。少し幻滅しそうだけどあったこともないし幻滅する必要もないだろう。う、うん。
人の趣味はそれぞれだしな……。