真野ちゃんは頑張る
会見が終わって今度はニュース番組の収録に行くことになった。
そのスタジオでパーソナリティの方が私に挨拶をしてくる。
「真野ちゃん。久しぶり」
「お久しぶりです山田さん」
「それにしても驚いたよ。急に復帰って。会見みたけど友人のため?」
「はい。友人のためです」
私は笑って答える。
「友人はどんな怪我を負ったの? お見舞いの品を渡そうかと思うんだけど」
「えっとですね、両足を骨折しまして」
「うわ……」
「本人は子供を助けたので名誉の負傷とか言ってます。すごく尊敬しますよ」
「今の時代にそういう子が……。今日収録終わったら買い物にいこう。お見舞いの品を買うよ」
「ありがとうございます。喜びますよ」
山田さんは収録の時はきつい口調だし自分にも後輩にもとにかく厳しい。お笑い芸人がもともとだったんだけれどコンビを解散して今はソロでMCなどをしている人。
こうして気さくに話しかけてくれるので助かっている。
「両足骨折って治るのに時間かかるっていうけどどれくらいかかるかわかる?」
「えっと、美咲ちゃん……。友人がいうには今年の10月くらいには治るとか」
「結構かかるんだね」
「あとその時に大学の試験もあるらしいんでさらにやばい状況になってるんですよ」
「そりゃ大変だ。両足骨折なら学校にも行けないだろうに」
そこが心配なんだよな。
美咲ちゃんのことだから単位はきちんととってそうだけどさすがに六か月くらいも学校行かない状態が続いたら勉強についていけるか不安。
あと、体育大学だから治りたてで身体を動かすってのも……。
「美咲ちゃんなら……何とかすると思うしそれができる才能があるからなぁ」
私はそうつぶやいた。
「山田さん! 収録始まりまーす!」
「わかりましたー!」
山田さんからお土産を買ってもらい、美咲ちゃんの病院を訪れた。
もう夕方ということもあり、面会時間ギリギリだった。美咲ちゃんの病室を訪れると、机の上にはノートが積まれており、一人で勉強しているところだった。
「美咲ちゃん。やっほー」
「真野ちゃん」
美咲ちゃんはノートを片付け始めた。
私は椅子に座り、お土産を机の上に置いた。
「これ、今日一緒に収録した山田さんって人から。美味しいお菓子だから食べてみるといいよ」
「ありがとうございます!」
美咲ちゃんは喜んで受け取ってくれた。
こういうときも元気だな。美咲ちゃんは。私の前だから元気にふるまってくれてるだけなのかもしれないけどさ。でも……こういうのも私は悪くない。
「美咲ちゃん。私頑張るよ」
「頑張ってください。私は暇なのでいつも追っかけますね」
「うん。びしばし働くから」
私は美咲ちゃんに笑いながら言った。




