真野ちゃんの復帰
病室でテレビを見ていると緊急ニュースが表示され、そこに驚く内容が書いてあった。
「真野ちゃんが復帰……!」
真野ちゃんがテレビ活動に復帰するという旨を書いたニュースが上にテロップとして流れた。私は思わず真野ちゃんに電話を入れるとすぐにつながった。
私は少し深呼吸をする。
「真野ちゃん復帰するってマジですか!?」
「うん。大マジだよ」
「べ、勉強はどうするんですか!? 勉強のためにって……」
「そこは……頑張るよ」
真野ちゃんが復帰。嬉しいニュースのはずなんだけど心配もしてしまう。
「真野ちゃん復帰は嬉しいんですけど心境が変わったんですか? やりたくなったんですか?」
「それもあるけど、美咲ちゃんのためでもあるんだよ?」
「私のため?」
「美咲ちゃん、暇でしょ? だからテレビで私を見て暇をなくしてほしいのと、美咲ちゃんも頑張ってるから私も頑張ろうって言う意地かな」
真野ちゃんが私のためにテレビに……?
思わず、涙が頬を伝う。さすがにこれは泣いてしまう。嬉しい。こんな不意打ち卑怯ですよ真野ちゃん……。
私は目頭を押さえる。
「教科書くらいなら楽屋でもできるしわからなかったら周りは大人なんだし素直に聞きまわるよ。美咲ちゃんも心配しないで療養しなよ。私も頑張るから美咲ちゃんも頑張って」
「もちろんですとも!」
「あ、いや、でも美咲ちゃんは今も頑張ってるから頑張る必要はないよ。気張らないで……」
「いえいえいえ! 頑張りますとも! 真野ちゃんに勇気づけられました!」
「ならいいんだけど……。あ、ごめん。あと、もう少しで会見ってのあるからテレビ見てて」
「わかりました!」
「じゃ、またあとでね」
電話が切られる。テレビをつけて待っていると生中継で真野ちゃんが映し出された。
凛々しく歩き、席に着く真野ちゃん。カメラ目線になったかと思うとにこっと笑ってきた。真野ちゃんその笑顔はやばいです。足どころか心臓がやられます。
なんだろう、心臓がバクバクして止まらないよぉ……!
『なぜ今の時期に復帰をしたのでしょうか? 話によると受験が終わるまでと聞いていたのですが』
『えっとですね、友人のためです』
『彼氏さんですか?』
『女の友達ですよ?』
真野ちゃんに彼氏なんかいるわけないだろう!!
真野ちゃんはなぁ……! 純潔で高貴で崇高な人物だ。そんじょそこらの男どもじゃ釣り合うわけがないだろう!
……熱くなりすぎた。でも、真野ちゃんに彼氏は多分いないと思う。
『友人が怪我をおいながらも懸命に勉強とか頑張ってて。私もちょっとそれが羨ましくなったんですよ。仕事と勉強を両立してやるって勝手にその子に誓いました』
『恵まれた友人をお持ちなのですね』
『はい。その友人は親友といっても……』
…………。
私は真っ白なシーツを血で汚すのだった。
真野ちゃんは美咲の為に復帰した。それを喜ばないはずがない。




