天使メタトロン
メタトロンは絶望しながら死んでいった。
ハーデスさんはそれを気の毒に思いながらメタトロンの魂を保管していたらしい。メタトロンの魂を魂の奔流…。この星空のところの天の川みたいなものから無理やり引き抜いてきたらしい。
「わかりました。蘇生いたします」
「ありがとうございます」
ブレーメンでも蘇生はできたし、こっちは魂がある状態での蘇生だ。
メタトロンの肉体を蘇生し、そこに魂を入れて……とかいう風になるんだろう。私はアナウンスで蘇生しますか?と聞かれたのでハイを答える。すると、またごっそりMPが持っていかれたのだった。
だがしかし、メタトロンの肉体が復元されていった。目の前にはピクリとも動かない天使の肉体がある。そこにメタトロンの魂が入っていく。
私は羽根をちぎり、MPを回復する。
「……ん」
と、蘇生した肉体から声が聞こえる。
終わったらしい。
「……あれ、ここは」
「メタトロン」
「は、ハーデス様? ってことは今私冥府にいるってことでしょうか」
「え、ええ! メタトロン! あなたは蘇生されたんですよ!」
「蘇生? 転生……ではなくて?」
「はい! 私が魂をずっと保管しており、そこの生命の主神様が蘇生してくれたんです!」
と、メタトロンが私を見る。
「……な、なんで、生き返らせたんですか」
「私はあなたを気の毒だと思ったからです」
「……そうですか。でも、生き返っても天界がああなままだと蘇生された意味がないと思うのですが」
「その点なら心配ないですよ! 見に行きましょうか」
と、ハーデスさんは私たちの腕を掴み、転移したのだった。
そこは天界。天使の翼をもった人たちが歩いている。
「……え、ここが天界ですか?」
「活気あふれているでしょう? あなたが生きていた時代よりよくなってるんですよ」
「し、信じられませんね。あの天使長がこんな風にしたんでしょうか」
「いえいえ。あの天使長は神に咎められすぐさま失脚。長年統治者がいなかったのですが今はウリエルが治めていますよ」
「ウリエルさんが!?」
驚いているようだった。
話によるとウリエルも出ていったらしいからね。
「ウリエルさんがよりよくしていったんですよ。ガブリエルさん方の力を借りてね」
「わ、私が死んでいた間になぜこんな変化が……! そ、その! 今から面会しに行ってもよろしいでしょうか!」
「わかりました。私は仕事あるのですいませんがミキ様。ついていってあげてください」
「わかりました」
ウリエルは執務室の上でぐっすり眠っていた。
ルシファーが隣で眠っている。メタトロンはそれを見て涙を流していた。
「ルシファー様が戻ってきている……!」
「そこに感動するか」
ウリエルはぐっすりと眠っており、ルシファーは目を覚ましたのか顔を上げた。
「おや、主様。何か御用でしょうか。そちらの天使のことでしょうか?」
「あ、ああ。うん。ほら、メタトロン。紹介」
「ルシファー様! 私は天界にルシファー様が戻ってきてくれて嬉しく思います! 天界はやはりルシファー様が治めるべきだったと……! あんな天使長が上にいないだけで清々します!」
「天使長? ああ、私を嵌めたあいつか。気にするな。昔の事だろう」
ルシファーが少し笑ってかえした。
「まぁ堕天しても楽しいことはあった。天使というしがらみがなくなったからこそできることもあった。堕天するのも悪くないと思っていたぞ」
「そ、そういうものなのですか?」
「まぁ、こういうやつは私以外にいないだろう」
その時だった。
扉が開かれる。凄い音を立てて開いた本人は二人。
「ウリエルさん! あっそびましょー!」
「ウリエル! 兵士どもの遠征の許可をくれ!」
ガブリエルとミカエルだった。後ろでラファエルが苦笑いを浮かべて立っている。その音で起きたのかゆっくりと上体をあげてミカエルたちを睨んだ。
少しだけミカエルたちはたじろぐ。そして、はあとため息をついた。
「静かに入ってきなさい。で、ミカエルは兵士の遠征の許可ですか。紙は書いてきましたか」
「ああ」
ミカエルは紙を手渡す。
「場所は高天原。三泊四日で必要なもの……。ちゃんと書かれてますね。許可しましょう」
「うし。みっちりしごいてやる」
……なんか聞いたことない地名がでてきた。いや、聞いたことあるけどこのゲームで聞いたことないところ。高天原?
「……ミキ様も来ていたんですか。そちらの天使は?」
「は、はは、はじめまして。メタトロンと申します。ウリエル様」
「ああ、はじめまして。ウリエルです。メタトロンさん。噂では死んでいたという報告があったんですが」
「あー、その、蘇生しました」
「なるほど」
ウリエルは笑って私のほうを見た。
作者は異世界転生したら悪役になりたいですね。
なぜかそういうのに強い憧れを持つんですよ。異世界転生したら悪役になるのが目標です