イナリの村防衛記 ③
間違えて13時にしちゃってました
吸血竜ヴァゴンは村の中心に降臨した。
「誰だァァァ! 俺様の精鋭をぶっ潰した奴はよォォォ!」
と、咆えていた。
うちはヴァゴンの前に立つ。
「うちや。ここはうちがナワバリにすることにした。大人しく消え去れ」
「消え去れ? てめえ、月下狐か。月夜でしか動けない雑魚が、俺様に指図するっていうのか!?」
「これでもうちは高ランクの魔物や」
ヴァゴンは嗤う。
「縄張りは百歩譲っていいとしてもよ、お前はなぜ人間の肩を持つ! 魔物は人間を襲う! 常識だろうが!」
「はん。うちは別に人間を襲おうなんていう考えはしとらん。うちら月下狐は温厚なんや。それに、無意味な殺傷はうちは嫌いやっちゅうこと。お前も続けんならこっちにも考えがあるで」
「無意味な殺傷? 甘いな! 殺すも傷つけるのも魔物だからするだろう! 本能ってやつさ! 全部俺様の本能! 俺様の勝手だ! 傷つけて何が悪い!」
「悪うない。悪うないが、ならうちも自分勝手で守らせてもらう。それだけや」
カイザー。はよこいや。
月も出ていない昼間では本来の力が出せへん。うちの本領発揮は夜。今は昼。力がでえへんのや。こういう枷があるからこそ、夜は強くなる。
攻めて夜やったら、救いようはあったんやけどな。
「それに、うちをはよ倒さなうちの仲間がくるで?」
「面白い。月の下ではないキツネがどこまでやるか試してやるよォォォ!」
ヴァゴンは咆えた。
咆えたと同時に自慢の牙を持つ口で噛み付こうとしてくる。うちは身軽。そんな鈍重な動きだと避けれるわ。だがしかし、決定力がない。力が半分まで下がっている。月が見えていれば、本来の力が出せるのに。
「ほらほら、どうしたんや? うちを倒そうとする威勢だけは立派やな? そんな攻撃じゃうちに当てることはできへんで!」
「だまれだまれだまれ! 血を吸ってやる! 吸いつくしてやる!」
尻尾をぶんと振り回す。尻尾を踏み台に空へとジャンプした。
そして狐火を展開する。狐火はヴァゴンを包む。大したダメージにはならへんが、時間稼ぎにはいいやろ。そして、ここは王都とそんな離れてない。すぐにくるだろう。だから、持ちこたえるのは数分だけでええんや。
つまり、もうそろ来る。
「ガアアアアア!!」
来た。
上空を見上げるとライオンのような顔をし、赤い液体を身にまとっているカイザーが現れた。その姿を見てヴァゴンは怯む。
「な、なぜカイザーがくるんだよ! お前もここ狙ってるのか!」
「違うよ。イナリがピンチだって言うからかけつけてきたんだ。僕が来たからにはもう安心だよ。吸血竜ヴァゴン。僕が相手するよ」
「こいつの血は爆発性を持つ……! くっ、逃げるぞ!」
と、飛び立とうとしたがカイザーがその上にのしかかる。爪で持ち上げてそして、上空へと連れ去った。
必殺技をやるつもりやな。ヴァゴンは離せと暴れている。
だがしかし、もう遅い。
カイザーを中心とし、デカい爆発が起きた。
ヴァゴン「潰してやる」
怒りを食らうミキ「粉砕、玉砕、大喝采!」




