弱音を吐けなくさせた原因
前半朱音視点
後半ちょびっとだけ珠洲視点
私が今日見舞に行くと、みさは泣いていた。
いや、さっきまで泣いていたような跡がある。私が来たから、泣くのを辞めたという感じがした。……まぁ、骨折して動けないってなったら泣きそうにもなるよね。
そう考えている。弱音を吐けばいいのに。私でよければ弱音を……。
「……辛いことがあるなら私、聞いてあげるけど」
「……いや、気持ちだけ受け取るよ。ありがとう」
と、断られてしまった。
辛いなら話すべきだ。私はそういうことを話す信頼に足りてないということだろうか。いや、普通考えてみれば当たり前かもしれない。私はいじめてたんだ。本来は信用なんかされるはずもないのに。
でも、今は仲良くしてるから離してくれてもいいと思うのに……! それとも、話したくないわけがあるんだろうか……?
私は珠洲ちゃんに聞いてみた。
『美咲は弱音を吐けないんだよ。人に』
「……なんで?」
『美咲はいじめられてたからさ、それでものすごく心配をかけてたって。それが負い目なのか強くあろうとしてるんだよ。……私もこういうこと言いたくないけど、君たちが原因だよ』
そういわれた。
納得がいった。私がいじめてたことで珠洲ちゃんやみさのお母さんたちにも心配をかけてたんだ。ものすごく心配をかけて……。みさが自殺しようとしたときなんかみさのお母さんだってものすごく心配をしたはずだ。みさのお母さんはみさが好きだから……。
改めてそう言われると、私たちがしたことの重大さが改めて感じられたような気がした。
弱音を吐けなくさせたのは紛れもない私なのに。それを知らずにのうのうと弱音を吐いてもいいんだって言って……。恥ずかしい。
『私は美咲が弱音を吐かなくなった原因だってことはまだ許してないよ。そこだけは覚えておいてね』
と、通話が切られる。
私は思いきり自分の携帯をベッドに投げた。珠洲に怒ってるわけじゃなく、自分に嫌気がさした。珠洲ちゃんに言われるまでに理由に気が付けなかった自分、今仲いいから弱音を吐いてほしかった自分、みさをそんな風に追い込んだ自分。
改めて、自分が嫌いになりそうだ。
すると、また電話がかかってくる。珠洲ちゃんからだった。
『あー、さっきはあんなこといったけどさ、美咲が弱音吐かない理由まだあった』
「……なに」
泣きそうな声で尋ねる。
珠洲ちゃんは笑ったようにため息をこぼしていた。
『恥ずかしいんだよ。美咲も。写真写るの嫌いだし自分のことを言うのもあまり好きじゃないしね。自分をあまりさらけ出したくないっていうのもあるから……あまり負い目に感じないでもいいよ』
珠洲ちゃんはそういって電話を切った。
私はそれを聞いてちょっと救われたような気がした。
☆ ★ ☆ ★
さっき朱音ちゃんから電話が来て弱音を吐かない理由を聞かれてそのまま答えた。
弱音を吐かなくなった原因だってことはまだ許せない。許したくもない。弱音が吐けないストレスが美咲を苛んでるから。見過ごせないよ。
「……でもま、今は楽しそうだし仲良くはできそうだけれどさ」
美咲ではないので私は許してない。
昔あんなことをしておいて今更許してくださいだなんて都合がよすぎる話だ。本人たちは反省をしているし、仲良くしているけれど、本来は許しちゃだめだよ。
美咲を自殺にまで追い込んだのにのうのうと仲良くしてるのはちょっと許せない。
だから、許せないと伝えた。けれど、美咲は許してる。本当は私が許せないだけなんだろうけどさ。でも、本来の立場を理解しておくべきだと思った。
今が仲良くてもいじめっ子いじめられっ子だったという事実は変わらないということを。過去は簡単に取り払うことができないってことをわかってほしかった。
けれど、ちょっとやりすぎたんでもう一つの理由を告げる。朱音ちゃんは少し安心していたようだった。
すいません! 明日の更新はないと思ってください!




