美咲の弱音
シアワセってなんだろう。
私は誰もが寝静まったとき、そう考える。病室で月を見上げながら。
お母さんは私のような娘が生まれてシアワセだっていった。天海さんは私と出会えてシアワセだっていった。そういわれて、私はちょっと困った。
シアワセってなんなんだろう。周りはシアワセなんだろう。一人でそう考え、少し不安になってくる。
「私は全然シアワセじゃない……」
抑えていた気持ちがあふれ出てくるような気がした。
涙が頬を伝う。泣かないって決めていたのに、まだまだ私は子供だ。泣くな、泣くんじゃない。たかが足の骨を折っただけだろう。
……それなのに、悲しい気持ちになる。いいことをしたはずなのに、するんじゃなかったっていう後悔も生まれ始めてきた。
何が悲しくて私は寝てなくちゃいけないんだろう。私だってもっと体を動かしたいのに……。それができない悲しさ。つらさ。我慢していた分が、気づいていたけれど無視していた気持ちがシアワセということを考え始めたせいで決壊し、あふれ出てくる。
「みんなはいいよな。十分に体を動かせるし。私だって走りたい。走りたいのに」
私の叫びが、小さな叫びが響く。
「辛い」
私の頬には涙が伝っているままだ。
涙が止まらない目元を押さえてぽつりとそうつぶやく。動けないというのは、精神的にも来るものだった。体を動かすのは好きなんだって改めて自覚した。
好きなことをできないという辛さ。他の人はできているのに私だけできないって言うもどかしさ。くるものはやっぱりある。気づいていたけれど気づかなかっただけだった。
「早く治したい……。足の骨折のせいで動けないのはもう嫌だ……」
月明かりが私を照らす。
私は、涙をぬぐった。もう弱音吐く時間は終わりだ。私だって弱音は吐く。ただ、人前で吐きたくないだけ。心配をかけたくない。誰も聞いてないところで一人で吐く。あとあれだ。人前で弱音吐くのはなんとなく恥ずかしい。強くありたい。いや、強く見せていたい。
こう思っている時点で子供だと思うけれど、私は強くなくちゃいけない。心配はもうさせたくないから。だから、苦しくても辛くても、あーだこーだはいうけれど決して人前で弱音は、弱いところは魅せたくない。
弱音を吐くとしても、それは心配をかけてもいい人だけだと思う。珠洲たちを信用していないわけじゃない。珠洲たちは昔に嫌というほど心配をかけた後ろめたさがあるだけだ。
後ろめたさもなにもない信頼できる人に出会えたのなら、私はその人の前で弱音は吐くだろう。そんな相手はまだ現れないけれど。
「誰にでも弱音を吐けたら楽なんだけどな」
私の性格上、無理な話だ。
「私はお姉ちゃんだし大人にならなくちゃいけないしな」
私は目をつむって意識を手放した。
美咲ちゃんだって助けたからいいよって完全に思えてません。
動けないストレスが爆発してるだけです。