死ぬる覚悟で突貫したけれど
朝焼け怪盗団のことをもっと聞きたかったけどこれ以上喋ってるとボスに叱られるからじゃあねと去っていった。
うーん……。私はなんとなく不燃焼感を残しながらもログアウトした。
「二つ名……。朝焼け怪盗団」
今日だけで新しく聞くような単語が二つ出てきた。
朝焼け怪盗団の活動内容とかメンバーとかは知らない。けれど、義賊だということはなんとなく理解する。それに多分、リーダー以外顔が割れていないので捕まえようにも捕まえようがなさそうだし。
いや、怪盗団っていうのはミスリードで大人数いるように見せかけて本当はセイレーンとアカの二人だけの組織とか。うーむ、謎。
「ログアウトしたはいいけどまだ昼の三時だもんなぁ」
学校帰る時間よりちょっと早い程度。なぜログアウトしたかというと、看護婦さんが来たら困るから。看護婦さんが定期的に様子を見に来るのでヘッドギアしてゲームしていると気付かないし、カーテンも普段は締め切ってるので返事をしないと余計な心配をかけるからこまめにログアウトはしている。
「島田~! 見舞いに来たぞ~!」
「おいす由宇崎! 暇してっか」
と、結構な集団が現れた。
島田さんと由宇崎さんのお見舞いの人らしい。結構交友関係があるのかこの病室には二人の見舞客あわせて11人くらいいる状態だった。
島田さんは女子が多く、由宇崎さんは男子が多い。
「由宇崎、さっき廊下ですげえ可愛い女子いたんだよ。お前仲良くなって紹介してくれよ」
「えー、自分でいいなよヘタレ。なんでもかんでも私に任せんなよー」
「頼むよ!」
「わ、私の事好きって言ってくれたら……いいよ?」
「はいはい好き好き」
「心こめてほしい」
「なら俺が本当に好きっつったらオーケーすんの?」
「女子から言わせてもらうと、ない」
由宇崎さんと男子の掛け合いがすごいな。
と、また病室が開かれる。
「おほっ、この子たちだよこの子たち」
「おっす美咲ー! 今日はみんな暇そうだったし連れてきたぞ~!」
うわ、すごい大所帯になったな!
珠洲、地衣、標に加えて城ケ崎くんと代田くんも来ていた。神林君は何処に行ったんだろうと思うけれど気にしないでおこうかな。いつか来るでしょ。
「先輩」
「あ、花園さんもきたんだ」
「はい。その、これ、お見舞いです」
と、手渡されたのはチョコレート。
結構高そうなやつだなー。ゴディバの? 違うっぽいけど。でも、これ、甘くておいしいっていうわけじゃなくて少しビター。うん、こういうビターなのが美味しいんだよチョコレート。
「って、今日結構人多いねー。同室の子たちのお見舞いかな?」
「あの制服って西高のだよね」
西高か。
と、見ていると西高の男子たちが顔を赤く染めていた。鵜坂西高校。私たちが通っているのは鵜坂東高校。別に東と西が対立しているわけじゃない。
「由宇崎、あの子たち俺らに気があるのかな?見てきてるんだけど!」
「ないでしょ。多分西高だから物珍しさ。あっちは東高だしね」
「いやいやいや。いけるって。こんだけみてるんだから。じゃ、俺突撃してくる!」
と、男子の一人がこちらに近づいてきた。
その男子は顔をにやけさせてちょっと気持ち悪い。デレデレしながら私たちに近づいてくる。
「そ、その、俺らになんか用すか……? っていうか、ここではなすのもあれなんで喫茶店行きません……?」
「あ、いえ、いいです」
「ごめんねぇ」
「ボクも遠慮するよ」
「あなたに興味ないです」
男子がその場で倒れた。
ヤムチャしやがって……。




