二つ名
ログインすると、目の前にはゴエモンがいた。
ゴエモン……はなぜか隈取のようなメイクをしている。えっ、なに? 歌舞伎役者でも目指してるのだろうか。そう思って聞いてみると。
「これか? なんかできたんだよな。ったく、私の顔がこの模様のせいで台無しだぜ」
「洗っても取れないし……。なんなんでしょうね」
コマチがタオルで拭いてみるもその赤い模様は取れず。
ゴエモン……。いや、もしかしてなんだけどあの殺意の壺。殺意を克服したから少し強化されたんだろうか。そう思って鑑定してみる。
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・天下盗り ゴエモン
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あれ?
なんか前と違うな。コマチを鑑定してみるとコマチしかない。二つ名っぽい何かが付いてる。天下盗りってかっけえな。天下を盗むみたいで壮大すぎるだろ。
「だがよ、ここ最近すげえ力が湧いてくるんだ。この模様が出たぐらいからだな。すっげえ調子がいいぜ!」
「……でも突然こんな模様が……。大丈夫ですか? 体はだるくない?」
「心配しねえでもこのゴエモン様がだるさ程度に負けるわけあるめえ! だるいどころか力があふれ出してくるぐれえだ!」
「ならいいんだけど……」
二つ名持つと能力が強化されるんだろうか。
いいなぁ、二つ名。私も欲しい。私の場合運営泣かせ? それは絶対つけたくないな。
二つ名。うーん、二つ名か。
そう考えているとカイザーがいる檻の前についていた。カイザーは下にいて、中から話声が聞こえてくる。
アクアとイナリの声がしていた。
「あ、ご主人! こんなところでなにしてるんや?」
「あ、ああ。いや、二つ名のこと考えてたんだ」
「二つ名?」
イナリたちがわからないような顔をしていた。
カイザーだけが神妙な顔している。二つ名について何か知ってることでもあるんだろうか。カイザーに視線で問いかけると口を開いた。
「二つ名。それを持った人は能力が上がると言われてるね」
「そうなんだ」
「うん。どういう原理かは知らないけど神様に認められた証だっていうことだよ。でもミキ様がなぜ二つ名のことを気にしてるの?」
「あ、いや。仲間が一人二つ名手に入れたもんだからさ」
「お、おめでたいね!」
神様から認められた証。
進化の一歩手前って受け取るべきだろうか。人間の進化先がわからないけどね。勇者だったら勇者→英雄→人神っていうことらしいけど、人間だったらどうなるんだろう。
うーん。わかんないから進化の一歩手前という仮定はしないでおくべきか。
「……うちも二つ名欲しい!」
「わ、私も!」
「いや、二人が手に入れたらやばいことになるからダメだよ」
カイザーがそう宥めると二人はえーと言う顔をしていた。
不満タラタラだな。でも、二つ名ってどう手に入れるかわかんないし、手に入れようとしても無理だろうて。ただ、たぶんきっかけは殺意だと思うんだよね。あれが何かしら関係していると思う。