珠洲のイメージ
神林君が椅子に座り、私たちのお説教を食らっていた。代田くんは関わらない主義なのか一人スマホをいじっている。いや、違う、怒られてる神林君を撮っている?
城ケ崎君は常識人で小さな声で叱っていた。まるで子供を叱る親のようだ。たぶん城ケ崎君はお兄ちゃんなんだな。兄弟とかいそう。
「説教はそれくらいにしてみんなでケーキ食べようよ。ね?」
「そうだな……。神林、気をつけろよ。病院内は静かにな」
「ごめん……」
城ケ崎君がケーキのふたを開ける。
私はモンブランを食べていた。美味しい。コンビニといえどスイーツはバカにできない気がする。そりゃ真野ちゃんが持ってくる一流の店には敵わないけどこれはこれであり。
「ん、神林君制服どうしたの? 制服のズボン少し破れてるじゃん」
「あ、ああ。多分どこかに引っかけたんだと思う」
「ああ、帰ったら縫ってもらいなよ。結構目立つところだし」
太ももくらいに穴がある。
結構広がるから早めに直したほうがいいと思う。
「そうしたいんだけどお母さん裁縫苦手なんだよね」
「じゃあ珠洲にでも頼む? あの子結構手先器用だし裁縫に関しては私よりできるよ」
「え、いや、女子に任せるわけには」
……今気になったんだけど珠洲ってどういう目で見られてるんだろう。
「珠洲ちゃんと女子に見えてるんだ」
「……普段は何もしゃべらねえけどゲームの話になったらすごい喋るしそのギャップで萌えてる人もいるぐらいには女子として見られてるな」
「……普段何してると思う?」
「え、ゲームだろ」
だよな。
私が聞きたいのはゲームではないところでの話。
「ゲーム以外だと何してると思う?」
「……部屋の掃除とか? ゲーム機に埃がかかるとかいって掃除はこまめにしてそうだ」
「俺一回葉隠さんの家にいったけど結構綺麗だったな」
「え、それいつ?」
「去年の今頃ぐらいだけど」
……部屋の掃除してるの私の時じゃん。
道理できれいなわけだよ。その時の珠洲をみたら多分幻滅するだろうな。
「お前何の用事でいったんだ? お前と葉隠さんそこまで仲良くないはずだろ」
「そうなんだけどね、うちの母さんが葉隠さんの母さんと友達らしくてお裾分けにおつかいいってたんだよ」
え、そうなんだ。おばさんと代田くんのお母さん仲いいんだ。
「行ったとき広瀬さんが帰るところにも偶然出くわしたんだけど覚えてない?」
「え、まじで」
たしかに私も珠洲の家にはよく行くのでたまに人とすれ違ったりするけど……。正直覚えてない。去年の今ごろとなるとA2Oを始めた時期だしそっちのほうの記憶しかないな。
「覚えてないなぁ」
「そっかぁ。まぁ、そこまで印象深くないし話さなかったから仕方ないか」
「そうだね」
私と代田くんが話していると、珠洲の声が病室の扉から聞こえてきた。
噂をすればなんとやら。
「お見舞いに来たよーっと。今回は地衣と朱音と標も一緒でーす」
「あれ、城ケ崎君たちも来てたんだ」
「あ、ああ。まあ、そろそろお暇するところだ。じゃ、俺ら帰るから。広瀬さん。お大事に」
「お大事にねー」
「は、早く治りますように」
三人の男子は帰っていった。
周りのイメージ:ゲームオタクで可愛い。意外としっかりしてそう
美咲のイメージ:ぐうたら。掃除くらいちゃんと自分でしろ




