神林にお説教?
入院生活も三回目になっていた。
私自身も慣れているわけじゃない。というか、実質これが初めて見たいなものだし。一回目は精神がぶっ壊れていたらしくて記憶がちょっと曖昧っていうか。入院したっていうことだけは覚えてる。その時の記憶はないし、美鈴が言うにはお姉ちゃんは一部記憶喪失だって言われた。嫌なことだから忘れたっていうことだ。嫌なこと……?
二回目は壊れてなかったけど壊れかけのラジオのとこまでいったらしい。ラジオいらないわ。壊れかけていたらしい。
その時の記憶はある。世の中に絶望して何も信じられなくなっていた。その時が人間不信での一番のピーク。たしか珠洲ですら信じることができなかったんだと思う。珠洲ですら信じられなくなるって相当やばかったんだなって。人間不信を克服した今だとそう笑える話だった。
三回目は別の意味で壊れていた。
いや、もう、物理的に。足が壊れて治るまで動けないから実質壊れた。うん。精神は大丈夫。暇すぎて暇をどう潰そうか考えているぐらいだ。
こう考えると私結構精神やられてるな。結構メンタルも強くなったと思ってるけどこれで鍛えられたのか?
「ひ、広瀬さん!」
そう考えていると病室に一人の男の人が現れた。神林君たちだ。
城ケ崎君に代田くんと……。
「あとあなただれでしたっけ」
「神林! というか、覚えてるよね!?」
「…………」
「あれ、興味はもうないのですか……?」
「冗談だよ。お見舞いに来てくれたんだ」
神林くん、見た目はいいんだけどちょっと苦手かな。見た目はいいんだけどね。見た目は。
神林くんは隙があったら私の事を手伝ってくるし。それはありがたいんだけど頼りになるだろ? とかいう視線がうざい。善意でならともかく下心を感じるからなぁ。
私的には神林君より城ケ崎君のほうが印象がいいんだよね。城ケ崎君は本当に優しいし。
「これ、見舞の品。ジュースは好きなの選んでいいぞ」
「本当? じゃあ私はリンゴジュース貰おうかな」
「そうか。あとこれ。コンビニので悪いがケーキだ。好きなのがわかんなかったから全部一種類ずつ買ってきた。好きなの選んでくれ」
「うわあ、めっちゃ優しい。じゃあモンブランをもらうよ」
選ばせてくれる優しさがすごい城ケ崎君。
私の好みとか言ってないし結構好み変わるから選ばせてもらえるのは有難い。こういう気配りできるといいよなぁ。将来いいお嫁さんになれるよ城ケ崎君。
「……一人だけポイント稼ぎやがって」
「……そういうところが私嫌なんだよ神林君」
……あ、つい口に出た。
でも、自分がそうできないからって人を恨むのはお門違いだと思うの。人を羨むのは仕方ないしいいけど口に出すのはやめたほうがいいと思う。
私が言ったことで神林君はショックを受けていた。
「よく言ってくれた。神林、お前普段性格いいのに広瀬さんの時だけそうなるのはどうかと思うぞ。広瀬さんが好きなのは寛大な人だ」
「……神林くん本当に私のこと好きなのはわかるけど、私の好みを城ケ崎君のほうがよく知ってる時点でちょっとやばいと思うよ」
いい人なのはわかるけど、もうちょい余裕を持った方がいいかな。っていうアドバイスなんだけど……。
「そ、そんな正論を言わなくてもいいじゃないかー!」
と、叫んで逃げてしまった。
ここ病院。静かにしましょうね。
努力が空回りしているけどさすがに余裕を持とうぜ神林君。
実際、美咲ちゃんは大人になっちゃってるし大人の余裕を持っている人が結構好きだったりしてます。精神が成熟しちゃった美咲ちゃんとまだまだ未熟な神林君。