怪盗セイレーンの奪取 ①
「怪盗団?」
私がゲームにログインし、ゴエモンのところにいくとそういう話を受けた。
「私もよくわかんねえんだが、この国には怪盗団なる義賊がいるらしいぜ。……盗み勝負してえなぁ」
泥棒同士惹かれあうんだろうか。
ゴエモンは仲間を見つけたかのように生き生きとした顔をしている。でも、怪盗団か。怪盗ってあれでしょ? 顔をマスクか何かで隠して華麗に物を盗んでいく。ゴエモンが技術の盗みなら怪盗は魅せる盗みというところか。
シルクハットをかぶって蝶の形をしたマスクをつけてマントを羽織る。これだけで怪盗っぽい。
「そいつは闇夜に紛れ込み悪徳貴族の宝を華麗に奪う。くう! 私も憧れるぜ!」
と、ゴエモンが笑顔になっていた。
だがしかし、突然真顔になる。うしろをギロリと睨んだ。
「ま、だがしかし、そこに隠れてるのはいただけねえな」
「バレました?」
と、突然シルクハットで蝶マスクをつけた男の人が出てきた。
全体が黒ずくめで闇夜に紛れ込めるな。たしかにかっこいい。
「ま、バレたなら仕方ないな。あんたからは俺と同じ匂いがプンプンするから興味持ってよ」
「おお、あんたが噂の怪盗か」
「いかにも。名前は……とりあえず隻眼とでも呼んでくれ」
彼は赤い目をしていた。
赤く瞳孔が光る。隻眼とかなにそれ。超かっこいいんだけどさ。
「私はゴエモン。天下の大泥棒だ!」
「ゴエモン。いい名前だな」
隻眼は微笑む。
それはまるで私たちの実力を図っているかのようだった。ゴエモンはそれを頬を掻いて流している。隻眼はあははと苦笑いを浮かべていた。
「……実力はすごそうだ。ならば、ゴエモンさん。頼みがある」
「なんでえ?」
「近々、グラップル公爵の家に盗みに入ろうと思っている」
「グラップル?」
「この国の宰相の家だ」
グラップル宰相……。ああ、あの人か。ゼウス王の横にいたあの人。見た目年齢だと50くらいだろうか。すごくベテランのような顔つきをしていて、物腰が柔らかい人。
隻眼は悪徳貴族から盗みを働くって言っている。なら、グラップル公爵は悪徳貴族なのだろうか。
「だが、警備が公爵家ともなると多くてな。俺だけじゃ掻い潜れねえ。もしもの時の為についてきてほしい」
《クエスト:怪盗セイレーンの華麗なる奪取 を受けますか?》
「セイレーン……?」
「……あら。よく俺の名前がわかったね」
と、驚いたような顔をしていた。
アナウンスがネタバレしたんだけどさ、セイレーンか。セイレーンってたしかギリシア神話に登場するの怪物の名前……。歌で惑わして遭難や難破にあわせる。
この人も……そんな感じ? この言葉はもしかしたら惑わし?
「で、ミキ、どうするよ。私はミキの決定に従うぜ」
「……じゃ、やろう」
セイレーンという名前に少しばかり不安感があった。