姉・妹 ②
今日の午後更新できないかもしれない
「お前のお姉ちゃん自殺したんだってな!」
と、クラスの男子一人が言ってきた。
たしかに事実。だけど……正直お姉ちゃんを恨んでいた。なんで自殺なんかしたんだって。自分が孤立しちゃうじゃないかとか、そんな恨みがあった。お姉ちゃんは……死ぬほど嫌いだった。
勉強とか何でもできるのに、それを普通だと勘違いするお姉ちゃん。それも嫌いだった。私もできるから美鈴もできるとか思いこむお姉ちゃんが嫌いだ。
帰り道、道端の石を思い切り蹴飛ばす。
「あーもうムカつく! なんでお姉ちゃんのせいで私がこんな目に遭わないといけないのさ!」
喧嘩はしたことがない。家ではあくまでお姉ちゃんが好きだというキャラを貫いている。
喧嘩したらお母さんに迷惑をかけるから。だから私はしない。
「苛めごときで自殺しないでよ! こっちが迷惑なんだよ!」
私のお姉ちゃんは本当に、嫌な人だった。
お姉ちゃんが入院している。
私はお見舞いに来た。お姉ちゃんはただただぼーっと窓の外を眺めている。私は話しかけてみた。お姉ちゃんというと、お姉ちゃんは「ああ」とそれだけいってまた窓の外を見る。
その時に、思った。お姉ちゃんは壊れたんだって。壊れちゃったんだって。いじめで壊れたんだって。
そして、私はすごい罪悪感に苛まれた。
お姉ちゃんは、壊れるほど追い詰められたから自殺したって言うのにさ、自分の都合だけで考えていたんだって。
いや、親のいないところで死ねとか結構言っていた気がする。それをお姉ちゃんの目の前で言っていた。なのにお姉ちゃんは私に構ってくれていたし……。
「……お姉ちゃん、私だよ」
「……愛」
「あい?」
「誰も私を愛してない。みんなも、美鈴も、私が死ぬのを望んでいたから死んだのに、なんで保護されてるの。なんで入院しているの」
「えっ」
「なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで! なんで! 死ぬのが人のためなんでしょ! 美鈴だって私に死んでほしいから死ねって言ったんだもんね! みんなだって死ねとか言ってくる! なのになんで死のうとしたら死ぬなって止めるの? なんで? 私は正しいことをしてるだけだよ。死ぬのを望んでいるなら死んであげる」
私の言葉の迂闊さが嫌いになった。
死ね、だなんて簡単にいうべきことじゃなかった。いじめられてる人に対して死ね、は冗談でもなんでもなくただの追撃なんだ。
私は、それを聞いてただただ茫然としていた。私が死ねって言ったから死ぬ? 私の迂闊の一言のせいで死のうとした?
「私を愛する人は誰もいないから。美鈴も、お母さんたちも私のことが嫌いみたいだし、死んでもよかったよ」
「……お姉ちゃん」
「……私のことが嫌いならもうお姉ちゃんって呼ばなくていいよ」
そういわれた。
私は、ひどく後悔した。嫌いだなんだの言うべきじゃない。お姉ちゃんは、家族からの愛もなく、周りからも蔑まれて……味方がいなかった。私だけでも味方になるべきだったのに。私はお姉ちゃんに悪いことをした。
そう思うと、目から涙がこぼれてくる。そして、膝から崩れ落ちて、地面に頭を付けた。自分がお姉ちゃんを追い込んでいたという事実が、私を絶望に貶めていた。
「ごめっ……なさい! 私がみかたになるべきだったのにっ……!」
「何言ってるの? 美鈴は全然悪くないよ。至らないお姉ちゃんだった私が悪いんだよ。むしろ私が悪かったよ。もっと違うお姉ちゃんだったらこんな泣かなくして済んだし。私がお姉ちゃんでごめんね」
お姉ちゃんは悪くないんだ。
死ねとか簡単に言った私が悪いんだ。お姉ちゃんに勝手にイラついてた私がすべて悪いんだよ。ごめん、ごめんなさい。
これからはちゃんとお姉ちゃんの妹になります、お姉ちゃんを好きになります。だから……許されない私を許してください。




