月夜は冷たく嘲笑ひ ④
満月の様子が見えない。
感じ取ることができない。武術の達人でもないし、魔物探知というスキルも持っていない。やばいなこれは。正直、見えない相手と戦うのは無理がありすぎる。
「……そこや!」
と、月下狐が虚空を攻撃すると、何かが吹き飛んでいったのか木がへし折れた。
「気配を隠しても無駄や! うちはわかるんやからなぁ! 同じ満月で力上がるんや! 今のうちは絶好調! たかがトラ如きに負けへんでぇ!」
「月下狐助かる!」
「月下狐と呼ばれるのは好きじゃないんや。ムーフォッコ……。せやなぁ、名付けてくれ」
「名づけぇ?」
「人間じゃテイムした扱いになるんやったなぁ。ま、ええわ。はよしてくれ」
といわれても。
ムーフォッコ……。キツネだからなぁ。狐の妖怪の名前にでもするかなぁ。玉藻の前でもいいんだけどそれだとあるゲーム思い出すし違うのにしよ。
というか、あれだな。単純にこれでいいや。
「イナリ。イナリでどう?」
「ええ名前や。うちは今日からイナリ! あんたんとこで従魔を務めさせていただきまっせ!」
といっていた。
そういえば、月下狐ってSランクとか言っていたような。私、Sランクの仲間の魔物多すぎ……。今のところアクアとイナリだけだけど。
「名付けたことによりうちの魔力が入って気配を察知できるようになったはずや。目を凝らしてみてみぃ」
といわれたので目を凝らす。すると、輪郭がぼやけてみえるようになっていた。
なるほど、これで戦える。少しでも見えたんなら、私の勝ちだ。
「相手は実力でいうとそれほど強くないで。見えないから強いんや。見える状態なら対して狸と変わらん。自分の実力に溺れすぎてるっちゅうわけやな」
「ああ、なるほど。わかる気がする」
見えないから強い。
たしかに死角からの攻撃とかは防ぎようがない。実質ノーガードみたいなものだからなんだろうな。見えないんだからどこからかくるかわからない。構える隙が無いんだ。
情報がないからなにをするかわからない。見えることもなければ気配を感じることもない。音ならば別だろうけど……。でも、不意打ちを主流としているのなら、音をださず歩くことは容易だろう。
「たぶん、実力でいうならうちのほうが強い。ただ、透明化が厄介なんや。うちも完璧に見えるわけではあらへん。ただただ気配を読み取ってるだけや。だから、勝てるかも怪しいかもなぁ」
「ああ、なるほど」
私もただぼんやりとだからなぁ。私も苦戦するだろう。
「ああ、でも肉弾戦では負けへんで? うちは強いからな! 負けるとか弱音はいたがうちは肉弾戦なら余裕やから! こんなこっすいような真似しないで正々堂々やれるならうちが勝つ!」
「わ、わかったよ……」
強いアピール……。
イナリたん作者好きなキャラのひとり。
実は結構獣系好き。




