月夜は冷たく嘲笑ひ ③
狐と狸の化かしあいはすぐに決着がついた。狐の勝利。
ふむ、どっちかがボスだった……んだな。これでクエストが終わる……。のか? いや、待って。簡単すぎやしないだろうか。いや、Sランクとかを相手どるんだから簡単とは言わないかもしれないけれどさ、何か違う。
「……違う」
「違うって、何がですか?」
「謎のモンスターって……本当に月下狐なの?」
「……違うとでも言いたいのですか?」
「なんか、違うと思う」
今日は満月。
そのモンスターの出現に条件があるとしたら、満月の夜だけとなる。だけど、月下狐は満月でしか動けないのか? 月が出ていたら、いいんじゃないのか?
私は聞いてみることにした。
「うちが満月のときにしか動けない? んなわけないない! うちは新月の時以外なら動けるんや。狸とかと一緒にしないで欲しいっちゅうねん」
「だよな……」
だとすると、やっぱり違う。
でも、本当に他の可能性があるのか? 狸がボスだと考えてもいいかもしれないけれど……。って、あれ、なんかさっきの言葉にも引っかかりを覚える。
どこだ……? さっきの言葉のどこに違和感があったんだ?
「ごめん、聞き取れなかった。もっかい聞かせて?」
「だからうちは新月の時以外なら動けるんや! 満月が一番力が出るっちゅうだけでな! 狸とかと一緒にせえへんでもらいたい!」
まただ。何かが引っかかる。
……あ、わかった。
「ねえ、とかってどういうこと? 狸以外にもいるの?」
「おるで。それはもうぎょうさん強いもんがなぁ」
多分……クエスト的にはそっちだ。
多分、狐と狸は外れ枠……。本当のターゲットはまだいる。
「知らないんか? ポセイも知らなさそうやなぁ」
「知らない……。誰なんです?」
「まぁ、しゃーないか。あいつは満月の時以外は森の奥深くで眠っとるし、見たら死ぬっちゅうようなやつやもんなぁ」
「見たら死ぬ?」
「生きては帰れへん。だから誰も知らないんや。まぁ、眠っとるだけなら問題はないんやが……。あいつ、満月の夜になると急に活性化してな、近くの村を襲うんや。狸とは違いまじでバケモンやで」
……うわぁ。
それが飛来したとなると、近くまで来ているはずだ。騒ぎにはなってない。来たら多分わかると思うんだけれど……。
すると、コマチが「ん」という声を出した。
「何か、反応がありました」
「反応?」
「行くときに糸を張り巡らせておいたんですが、切られた……? ワイヤースパイダーの糸なのでそう簡単に切れるわけがないのですが……」
「そいつやな。多分、向かって来とるで」
えっ。
すると、ゴエモンがいきなりコマチを突き飛ばした。
「あぶねえ!」
すると、ゴエモンの目の前に大きなトラが現れて……!
「危ないっちゅうねん!」
それを月下狐が思いきりトラの顔を蹴飛ばした。
トラは吹き飛んでいく。キレイに着地し、グルルとうなっていた。ああ、本命はこいつだ。私はそう思ってしまった。
鑑定してみると、名前は”満月”という名前。
冷たく私たちを見ている。獲物を狩るような、そんな目をしていた。
「山月記を思い出すなぁ」
あれは人が絶望してトラになる……。月に向かって咆哮をしてすがたを消した。もしそれをモチーフにしていたら。
「グルルルァァァァァ!」
月を見上げ天高く咆哮をあげる。
すると、だんだんと透明になっていって……。ああ、なるほど。山月記か。




