美咲ちゃんの回想 ⑤
私は珠洲の家に来ていた。
「うへぇ、溜め三外したぁ!」
「こっちくる! まずいって、私ガンナーだから防御力低いんだけど」
珠洲と一緒にゲームをしている。
私はクラスで一人でいると珠洲が久しぶりに遊ぼうと声をかけてきたので遊んでいた。私はボウガンで敵を撃っている。
「美咲、友達出来た?」
「できるわけないし、作る気ないよ」
「だよなぁ。あんなことあって美咲人間不信だもんねぇ」
人間不信。
あんなことがあって高校から人を信じられるって言うのがまず無理な話だと思うけど。このままじゃいけないんだってはわかっている。けど、怖いものは怖い。
裏切られるんじゃないか、いいように使われるだけなんじゃないか。そんなことを思って手を伸ばせない。
「あ、やっべ、死にそう」
「粉塵飲むよ……」
私は目の前の画面に集中する。
攻めて今この時だけは学校の辛さを忘れたいから。何かに熱中して現実逃避をしたい気分だった。
「でもさ、美咲。ずっと怖がってちゃ前に進んでいかないと思うよ」
「……わかってるよ。そんなことは」
「もしまた裏切られたらさ、私に泣きついてきていいよ。だから、挑戦してみたら?」
「……善処する」
ずっと信じられないで逃げるのは子供のままだ。私は大人にならなくちゃいけない。
けど……やっぱり怖い。怖いものは怖いんだよ。同年代の子が一番怖い。いや、人間自体が怖い。いじめるクラスの人たち、それを見てみぬふりする教師。クズばかりだった。
中学の時の絶望は、まだ私の心にある。それが、私のストッパーとなっていた。
「”チャレンジして失敗を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ”」
「……?」
「なんか聞いたことあるけど美咲にはこれがいいんじゃないかな」
「……なに立派に本田宗一郎のこと言ってるの……。そんな頭よかったっけ」
「ネットで漁ってたらなんかでてきたんだよ」
珠洲は笑う。
何もしないことを恐れろって……。私はそんな前向きに生きていない。そんな風に思えるような人生なら私は自殺なんか試みてない。
「そんな前向きな性格してないよ私は。怖いものは怖いよ」
「……そっかぁ」
「……でも、大人にならなくちゃなぁ」
「美咲……!」
珠洲が笑顔になった。
だけども私は、大人になるだけだ。仲良くなるつもりは毛頭ない。一応会話はするだけにしておく。そこまで奥深く付き合うこともなかったら裏切られても浅いダメージで済むだろう。
高校に入って何かが変わるというのは多分嘘。
変わるのは周囲の環境だけだ。自分は高校はいったぐらいで変わることはできない。だからこそ、私は変えてやる。
子供じみた自分を消してしまおうと、そう決意した。




