美咲ちゃんの回想 ④
学校に行ってクラスに入ると噂されていた。
真田さんの筆箱隠して、嘘ついて逃げようとした最低なやつだって。はは、笑うよ。みんな嘘を真実だって思い込むんだ。
微妙に本当のことだからタチが悪い。
「学校辞めようかな」
珠洲には悪い。けれど、もうこの学校……いや、もう周りにはうんざりだ。
私は悪くないのに、犯人に仕立て上げられてさ、周りの目も冷たい。じゃあ私は何を信じればいいんだろう。
「ねぇ、広瀬さん! ほら、これあげる!」
「……よくこの状況で話しかけてくるね。私は貴方の筆箱隠したんだけど」
「え? 欲しくて隠したんでしょ? だったら最初から言ってくれればあげたのに」
真田さんは相も変わらず話しかけてくる。自分でいうのもなんだけど頭おかしい。
「別にいらないよ。というか、いいの? 私と話して。私は貴方の筆箱隠したんだけど」
「え? あー、それね。うん。いいんだよ。嘘の情報信じる人とはあまり関わりたくないし」
「……嘘って」
「気づいてないと思ってた? それぐらい気づくよ。広瀬さんはそんなことしないと思う」
意外と見る目はあるんだろうか。
嘘情報に踊らされない……。なかなか骨があるというか、もしかしていい人なのかもしれない。
「なんていうか、広瀬さんはそんな陰湿なことはしないっていう印象があるからさ」
「……ふぅん」
「それに、広瀬さんは友達だし! もし本当にやったとしても友達としての悪ふざけってことだし! そこまで怒ることじゃないよ」
「……」
私にはこの子は眩しいな。
どんだけ私と友達になりたいんだろう。友達になって利用でもしたいのか? 都合のいい駒になれっていうことだろうか。
私をほめるにはいい人だっていうのが大半だ。だが知っている。それは丁度いい人だとか都合のいい人だってことを。都合のいい駒になれっていうことか?
「悪いけど、私は都合のいい駒になりたくない。もう友達だとかいうのはやめて」
「……なんで泣いて」
「いいから。私はもう友達だよとかいう言葉は聞きたくない」
友達だよという言葉にはいい思い出がない。
友達だよと言ってくる人は信じることができない。そういう甘い言葉で私を釣るだけだから。もうその手は食わない。
「……もう学校辞めようかな」
「え゛っ」
「ここにいる人たちつまんないし、好都合に友達はいないしやめるにはもってこいかな」
「だ、だめ!」
と、私に抱きついて真田さんが止めてくる。
都合のいい駒がいなくなったら困るの?
「私は広瀬さんを悲しませたりしないから! 私だってこの学校に友達いないし悲しいんだよ! だから友達第一号になってよ! お願い!」
「は、離して!」
クラスの視線が私のほうを向いてくる。
は、恥ずかしいでしょうが!
「友達になるまでやだよ! 広瀬さん泣いてるのに! 本当は欲しいんでしょ!? なら私がなるってぇ! いや、なってください!」
「わ、わかったから! 離して!」
「友達になってくれる?」
「わかったよ……」
「学校辞めない?」
「……」
と、ぎゅーっと抱きつかれる力が強くなる。ちょ、締め付けられる……!
「わかったから! やめないから!」
「……よかった」
抱きつくのをやめて真田さんは手を差し出してくる。
「改めて、よろしくね」
「……はぁ」
思わず友達?になったけど、どう絶交しよう。
強引に友達にならないと美咲ちゃんは友達になりませんでした。




