美咲ちゃんの回想 ②
入学式が終わって数日が過ぎた。
グループも大方形成されており、珠洲も峰岸さんとよく話しているらしい。私は一人でいた。誰もかれも私に話しかけてくることはない。
話しかけてこないで欲しいから。私と話して、気に入らないと思われたらいやだから。
相手の機嫌を損ねないように顔色をうかがうのは嫌だ。なら最初から一人でいい。
「つまんない」
みんな、つまんない人たちだ。
きっと、中学時代も普通に過ごせていたんだろうな。いじめられもせず、ただただ義務教育を終えたんだろうな。羨ましいな。
私なんかいじめられていたっていうのに。ムカつく。
「ムカつくなぁ……」
「何がムカつくの?」
と、急に私に話しかけてくる女の子。
スカートを少し上げているのか見えそうである。
「……なに?」
「あ、ごめん。なんか寂しそうにしてたから」
「寂しくなんかなかったんだけど……」
寂しいわけがない。
いや、珠洲が最近かまってくれないから寂しいけどさ。
「……で、誰」
「ええ!? 私の名前知らないの!?」
「興味ないから」
「ひどいなー。私は真田 地衣。あなたのお友達ですよ?」
「……いつ友達になったの」
「今日今さっき」
「……強引だなぁ」
強引すぎる。
勝手に友達認定しないで欲しい。友達は裏切るかもしれないのに。そう簡単に人を信じることができない。私の欠点はわかっている。けど、すぐに信じろというのが無理な話だ。
真田さんも、私がつまらない人間だって思って逃げていくか、いじめるに決まっている。
「広瀬さんは友達作らないの?」
「……逆に聞くけど真田さんは彼氏作らないの?」
「……作る気ないし」
「私もそれと同じ」
だから、放っておいて欲しい。私を苛める可能性がある人間は近づかないで欲しい。
みんな私を苛めるに決まっている。だからこそ嫌なんだ。嫌だったんだ。学校に来るの。珠洲のお節介さが出たのかもしれない。
たしかに中卒はあまりいい印象がない。けれど、どうでもよかった。私は成人前に死のうと思っていたから。
「そんなこと言わないで。友達いたら何かとお得だよ?」
「……友達だからって物奪ったりとか暴力したりするくせに」
「そんなことしないよ! 友達にだってちゃんと礼儀をもって」
「礼儀? 見知らぬ人にそんなことができるの?」
「できるよ! むしろ見知らぬ人だからできるんだよ!」
「じゃあ見知らぬ人ではなくなったらできなくなるの?」
「そういうわけじゃないよ! なんでそう穿った見方しかできないの!?」
私の中学がそうだったから。
転校生がきた。友達になろうっていって友達になったんだ。けれど、その子が陰で私の悪口を言っているのを聞いた。
「あいつと打ち解けてきたわ。もうちょいでいろいろ取れそう」とか。それを聞いて、私は嫌になった。信じることをしたくなくなった。
「ひねくれてるから。嫌なら関わんないで」
「嫌じゃないから関わってもいいの?」
「……」
なんだこの人。
面倒な人だ。
ネタが不足しているから回想で補っているわけじゃないですよ! 決して!




