お見舞い
珠洲ちゃん視点
「広瀬さんなんですが階段から落ちて骨折して入院したということでしばらくお休みです」
先生がそう言っていた。
その報せに私は唖然としてしまう。知らない……。美咲なんで余計に悪化させてるの!? そう思っていると地衣と標も驚きを隠せないようだった。
そしてホームルームが終わって二人が私のところにやってくる。
「どういうこと!? 熱中症で倒れて三日間じゃなかったの!? なんで骨まで折ってるの!?」
「わ、私も今初めて聞いた……。なにしてるんだろ美咲……」
「とりあえず今日の放課後行ってみよう。葉隠さん……じゃなかった。珠洲さんもそれでいいよね?」
「う、うん」
勉強なんてしてる暇じゃない。
しなくちゃいけないんだけど、美咲が心配だ。美咲のことだから多分笑って怪我しちゃったとかいうんだろうな。なんで怪我したかわからないけど美咲ならそういいそうだ。
美咲は自殺するほど追い込まれていないから……。
「ホントなんで骨折してるの美咲……」
放課後。美咲が入院している病院に私と地衣と標と朱音でやってきた。
一応手土産は持ったけど……。私は病院内に足を踏み入れる。
「美咲の病室は……」
たしか二階だったかな。
二階へいくためのエレベーターに乗ろうとエレベーターホールに行ったとき、エレベーターの扉が開いた。中にいたのは美咲。あと、知らない女の人が車いすを押していた。
「美咲!? 出て大丈夫なの!?」
「珠洲。大丈夫大丈夫」
美咲はそう笑った。
「なんで余計な怪我までしてるのさ。足の骨折るなんてなにしたの」
地衣が美咲の足に視線を向ける。
「あはは。名誉の負傷だよ。まぁ、階段の三階から一階に落下しただけ」
「結構な事故じゃん……」
飛び降りた……? とは考えづらい。
私はふと女の人に目を向けると申し訳なさそうな顔をしていた。この女の人がらみだろうか。
「気をつけなよ。というか、いつ治るの」
「完全に治るまで六か月とかそこらだったかな。手術はもう済ませたし……」
骨折で手術するんだ。
いや、そうじゃなくて。
「長いね……。勉強とか大丈夫?」
「そこなんだよね。悪いけど定期的にノート持ってきてくれたら助かるんだけど……」
「いいよ」
「ありがとう。でも一人で全教科はきついと思うからさ、畦道さんと珠洲も頼めるかな。片足だけなら松葉杖ついてでもいったんだけどさ」
美咲はそういって笑う。
美咲は多分片方だけの骨折なら本当に学校に行っていただろう。さすがに体育は休むと思うけど……。
「うん。ボクにも任せてよ」
「わかった。その、字、汚いと思うからそこだけ謝るよ」
私の字は本当に汚い。女子だからといって誰もかも字が綺麗だと思ったら大間違い。美咲が言うにはミミズが走ってるどころかランボーダンスを踊っている字だという。女子特有の丸っこい字、私には欠けない。絵は上手く描けるんだけどなぁ。
「昔から汚いよ。知ってる」
「ひどい」
「……私だけ何もできない!」
朱音がそう叫んだ。
同じ学校じゃないからそりゃできないだろうなぁ。
名誉の負傷という言葉は間違いじゃない。




