人助けの代償
真野ちゃん達が病室にやってきた。
私はギプスを足に巻いて固定し、尚且つ両足共に動けない状況にあった。
「大丈夫!?」
そういって心配そうに駆け寄ってくる。
私は大丈夫ですと笑顔で答えた。
私は三階から一階に一気に落ちていった。
病院の階段は上から見ると螺旋階段のようになってるらしく真ん中だけは一番下までつながっている。そこに落ちた。
なんとか身体を捻って頭から着地は避け、一命はとりとめたものの、両足を複雑骨折。
もともとひびが入っていたみたいだな。多分あの時だ。
「本当に心配したんだよ。入院長引いたって聞いて」
「すいません。迷惑かけました」
「あれから相手は謝りに来た?」
「そりゃもうこの世の終わりみたいな顔をしてましたよ」
たしかにあなたの息子のせいで骨折したとかいろいろ難癖をつけようと思えばつけれるが、私はそれはしない。
だって体が動いた。助けないとと思った。ただそれだけ。怒る理由はない。
「相手側にとっては自分たちが怪我させたようなものだから仕方ないよ。でも、美咲って本当に損な性格してるよね」
真綾がそうばっさりといった。
損な性格……たしかにそうかもなぁ。
「でも、そんな美咲ちゃんに救われた人は少なからずいると思うよ。本来この怪我は怒っていいけど怒らないって言うのは相手側も相当助かってると思う」
そういうものだろうか。
この怪我は私のせいだと思ってるし怒るほどでもない感じ。不満点は入院日数が伸びたこと、歩けないので車いす生活を送ることぐらいか。
「美咲ちゃんは優しいから。だから、許せるんだよ」
と、真野ちゃんが断じた。
優しい云々の前に自分のせいだって言う感覚がすごい。だって見捨てていれば私は怪我をしなかった。子供を見ていなかったあっちが悪かったんだから私が批難されるいわれは普通はない。
けど、あそこで見捨てていたらなんだかだめなんだ。
私が助けると選んだんだからそのせいで怪我をするのもすべて私のせい。そう考えている。
「これ、おみやげ。ぬいぐるみ」
「なにそれかわいー!」
真綾は私にぬいぐるみを手渡してくる。
ふわふわ。うわ、抱き心地も触り心地も超いい。すっげえ抱きつきやすい。しかもかわいい。モチーフはあれか、アリクイ。なぜアリクイなのかがよくわかんないけど可愛いな。
「……寂しいと思うから。またほしかったら買ってくる」
「うん。その時は頼むよ」
私は思い切ってぬいぐるみに抱きついた。




