入院 ①
私は今病院のベッドの上にいた。
なんでこうなったんだろう。ちょっと記憶があいまいだ。たしか昨日連休最後で親が帰ってくる日だから家を掃除して……。
それで、えっと、あれ? なんだっけ。
「……なんで私入院してんの?」
自殺したというわけでもないんだけれど……。
と、横をふと見ると手紙がおいてある。お母さんの字で「目が覚めたら連絡ください」と書いてあった。いやいや。うん?
私は立ち上がる。点滴がついていたのに気づかず、立ち上がりぐいっと点滴の奴を引っ張った。その点滴のやつが倒れてでかい音が鳴った。
「……ナニコレ」
今どういう状況?
「目が覚めましたか?」
「え、誰ですか?」
「私は看護婦の真壁です。広瀬さん。危なかったですね」
「危ないって……?」
「熱中症で倒れてたんですよ」
「え、まじですか」
たしかに結構暑かった。汗を流していたような気もするな。掃除終わったら風呂入ろうとしてそこまで我慢していたような気もする。
なんとなく思い出してきた。暑かったけど調子こいて家の掃除全部終わらせようとしたんだ。エアコンつけようにもエアコン壊れてて動かない。窓を開けるのも面倒で扇風機をずっと探してたんだ。扇風機見つけられないまま倒れてしまったらしい。
「水分補給はきちんとするようにしてください。それと、暑い部屋にこもらないようにしてくださいね」
「き、気を付けます」
「はい。電話するのでしたら一階にありますのでそちらをご利用ください」
「わかりました」
真壁さんはそういって点滴の奴を起こして去っていった。私は立ち上がり、歩き出す。
熱中症でぶっ倒れるとかどんだけ暑かったんだろう。五月なのに異常なほど気温が上昇するとかニュースでやってたな……。
一階にエレベーターでおりると地衣たちがエレベーターの前にいた。
「あ、美咲ちゃん」
「あれ、地衣と朱音?どしたの」
「みさのお見舞いだよ。ぶっ倒れたって聞いたからさ。ま、また自殺したんじゃないかって」
「いやいやいや。もうさすがにしないよ。熱中症でぶっ倒れたんだよ。ずっと暑い中扇風機探してたらぶっ倒れたみたいでさ」
扇風機がなかなか見つからなかったんだよ。
どこにしまったっけ? 未だに思い出せない。
「よかった……」
「今楽しいし自殺することはないよ」
「うん……」
まぁ、過去が過去だしな。
人は知らないうちに誰かを傷つけてるし、知らないうちに私を傷つけたとか思ってしまったのかな?
「でも、入院してるってことは相当やばかったかも」
「気をつけなよ。異常気象なんだから」
「うん。これからはマジで気を付けるよ」
昨日は珠洲を叱って、それで興奮していて眠れなかったしな。結構寝不足だったし熱中症になりやすかったと思う。
「でも誰が病院に連絡したんだろ。お母さん帰ってきてないし……」
「珠洲だよ。美咲に謝りに行ったら美咲が倒れてるって」
「ああ、珠洲か」
珠洲が病院に。
また迷惑をかけたかな。珠洲は結構厳しく叱ったのに私を気にかけてくれたんだ。なんか、怒ったことも申し訳ないな。少しは目をつむってもよかったかもしれない。
「で、珠洲は見舞にこないの?」
「美咲が教えられない分美咲に頼らないで勉強してみるだって。美咲に会ったらたぶん頼るからいかないって言ってる」
「珠洲……」
迷惑をかけたんだ。少しくらいは頼ってもいいのに。
でも、珠洲も本気を出し始めたのかもしれない。ゲームをしたことは大目に見よう。
「珠洲ちゃんもようやく勉強に本腰をいれはじめたよ。ちょっと遅いけど」
「……でも、成長は喜ぶべきだね」
珠洲は成長し始めた。




