闇は光を穿つ矛となり、光は闇を断つ盾となる ④
アルテナ様はカーリが天界に運んでいった。
「さて、私はやるべきことをやろうか」
と、ベノムがそういって消えた。
すると、背後でデカい爆発が起きる。思わず振り向くと、カイザーがこちらに飛んでくるのが見えた。どうやら終わったようだ。
カイザーは地面に着地し、そのまま寝そべった。
『あー、疲れたよぅ。王国に被害を与えないように戦うのはきついねぇ。特に僕はねえ』
すると、ポセイドラゴンがカイザーの上に着地する。
『ごふっ……なにするの』
『なんとなくです』
『うぐぐ……』
二人はすごい傷を負っていた。
やはり一筋縄ではいかなかったらしい。アクアはところどころ鱗がはげ落ちており、カイザーは肉がすこし抉れていた。
「二人とも、お疲れ」
『……ええ。ありがとうございます』
『どうってことないですよ。王国を守る使命を与えられましたから』
従順でいい子だなぁ……。
まぁ、これにてアルテナ様襲撃事件は幕を閉じた。あとは、事後処理だけだ。私はベノムが王に説明しに行くからついてこいと言われたのでついていく。
王城は人間であふれかえっていた。兵士が門にたち、中には国民がいる。逃げてきた人たちだろうか。
「通してくれ」
「ごめんなさい」
私たちは人混みをかき分けながら謁見の間に向かう。
だがしかし、謁見の間に王はいなかった。だとしたら会議室かどこかだろう。会議室に向かうことにした。
会議室にいくとゼウス王が祈りを捧げている。
「……ゼウスさん」
「み、ミキ様!」
ゼウス様が私に抱きついてきた。
「説明していただけませんか? 私たちに何か問題がありましたでしょうか。神の不興を買うような真似、私たちは致しましたか……?」
「いや、してないよ。アルテナ様はちょっと操られてたみたいでさ。もう大丈夫。もう襲うことはないよ」
「ま、誠ですか!?」
「うん。だから、もう心配いらないよ」
そういうと、私に縋ってきた手を緩める。
そして、ほろりと涙を流していた。
「よかった……。私が前王みたいなことをしたんじゃないか、なにか粗相をしたんじゃないか、不安だったんです。不安で……よかった」
「今回ばかりはあなたたちに非はない。むしろ、心配を背負わせた私たちの責任だ。すまない」
「いえ、いいんです。アルテナ様も優しいわけではありません。適度な恐怖も、必要なことだと思いますから」
「いい王だ。発展することを祈っている。私も、アルテナ様もな」
「はいっ!」
ゼウス様は満面の笑みで答えていた。
神への恐怖心。今回の騒動で国民も持ち始めたんじゃないだろうか。尊敬すること、敬うことも大事だけれど、恐怖も大事ではあるか……。
「王都が少々壊れてしまった。天界から遣いをだす。手伝いをさせてやってくれ」
「いえ……いいんです。人間の国は人間で……」
「おいおいつれねーじゃん!」
と、そこにいたのはミカエルたちだった。
ミカエルが腕を曲げてアピールしている。
「天使兵は敵もいなくて暇なんだ。だから仕事ができるってやる気に満ちてるって言うのに……。なぁ?」
「兵士といえど天界にそれほど敵もいねえしな!」
「力を持て余して仕方ねえ! 手伝わせろや!」
と、天使たちがわめいていた。
たしかに有り余っていそうだな……。
「というわけで、ミカエル率いる天使兵。有無を言わさず手伝ってやるからな」
「あ、そうそう。必要な備品やものがあったらこの私、ガブリエルが調達いたしまーす。費用はこちらもちですからね。ウリエル?」
「はい。迷惑をかけたお詫びだと思っていただければ」
「うふふ、私は特にすることないのでお風呂とか入りたかったら用意いたしますね」
四天使がそろい踏み。
ミカエルは兵士たちに命令を出して王都に残る瓦礫を撤去させるらしい。今回は神の不祥事みたいなもの。尻拭いは自分たちでするということか。




