闇は光を穿つ矛となり、光は闇を断つ盾となる ③
力を失ったアルテナ様のお姉さんが地面に落ちた。
顔に土ぼこりをつけて恨めしそうにアルテナ様を睨んでいる。
「まだ、下克上を狙っていたのですか。こりませんね」
「うるさい! なぜ姉である私じゃなくてお前が神に……! オルテナもそうだ!」
「……あなたには才能がなかったということ、オルテナはあくまでも人を思い統治していました。あなたは人を思わない。本来神は生物を思うべきなのですよ」
アルテナ様の姉はぎりりと歯を食いしばっていた。
悔しそうにしている。
「ここは私の世界です。姉さんといえど好き勝手するのなら私は容赦はしませんよ」
アルテナ様の目がこれまで以上に冷たい目をしていた。
その目を見たベノムは唾をのんでいる。他の神も恐怖で動けないのかその場から一歩も動かない。私も今までで一番怒っているアルテナ様を見た。
「貴方の世界ならまだしも……私の世界で暴れるとは。これまで何度かこういうことをやられましたが、被害は私だけなので黙認していました。が、ミキ様及び、他の神や人間に迷惑をかけたことは重罪に値します。身内だからといって情けはかけません」
と、アルテナ様はブラックホールを創り出した。
そのブラックホールを見てアルテナ様のお姉さんの顔が歪む。恐怖に染まっているような顔だった。必死に逃げようとしているけれど、宙に浮かされて逃げ場を失っている。
「ひっ……! しょ、消滅する……! や、やめろ! 私は姉だぞ! こんなことして……オルテナ! 助けろ!」
「……嫌です。私にも、いろんなことしたじゃないですか」
ブラックホールはお姉さんに近づいていった。
「謝る! 謝るから、助けてくれ……! もうしない! しないと誓う! だからやめてくれ! 魂の消滅だけはやめてくれェェェェ! うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
と、ブラックホールに吸い込まれて断末魔が止んだ。
同時にアルテナ様がその場に倒れこむ。
「……あんなのとはいえ、一応姉です。やはり来るものはありますね」
少し泣きそうな顔だった。
オルテナ様がアルテナ様の背中をさする。オルテナ様は優し気な笑みを浮かべていた。
「身内にもとことん優しいお姉さまですからね。やはり、身内を手にかけるというのは厳しいものあるよね。うん……。あとの処理は私とベノムたちでやっておくから……。お姉さまは少し休んでて」
「……そうさせてもらいます。オルテナ。迷惑をかけますね」
「ううん。私もお姉さまに迷惑をかけたことがあるしお互い様。私も、私の世界をあんな風にしちゃったのを今改めて謝らせてください。ごめんなさい」
「……いいんです。あなたは無知だった、責任感がなかった。ただそれだけ。でも、今は違いますね。もう一度、あの世界を管理してみますか……?」
「うん。それはおいおい。今はお姉さま。業務を忘れて休んで。一日くらい休んでも誰も文句は言わないよ」
オルテナ様は少し泣いていた。
アルテナ様の姉だというのならオルテナ様の姉でもある。情はあったのかもしれない。
「……レジェンド級の魔物が活性化していたのも、天界が襲撃されたのも、全部イルテナが裏で糸を引いていたようですね」
「……なるほど。厄介なことをしてくれる」
天界襲撃って……。物騒だな。
「とりあえず、私は休ませてもらいます。ベノム、オルテナ、カーリ。あなたたちが忠心となり見守っていてください。私は……少し寝ます」
と、その場に倒れたのだった。
 




