ブレーメンの音楽隊 ①
私は蜜柑ちゃんに断りを入れてA2Oをすることにした。
ログインして、冒険者ギルドに向かう。シルベが待っているはずだから。そう思って急いでいると怪しげな男に呼び止められた。
「お嬢さんお嬢さん」
「なに? 今急いでるんだけど」
「これをご覧ください」
と、見せられたのは手鏡だった。
手鏡の中には赤い少女が映っている。私ではない。鏡……じゃないのだろうか。そう思っていると、急に私の体が浮き上がる。
そして、私は吸い込まれていった。
「実験成功です。ありがとうございましたミキ様」
そのような声が聞こえてきた。
目が覚めると、ギルド内にいた。
ギルド……といっても第九層の冒険者ギルドではなく、精霊の守護者のギルド。NPC用に与えた部屋に私はいた。
なぜわかったかというと、アリスがいたから。
「……お主、急に現れるとは何奴じゃ?」
「ふぇ?」
「ん? あ、僕知ってますよこの人」
と、ハーメルンが私を指さした。
「この子はブレーメンです。ほら、音楽隊あるでしょう? その創設者なのですが……その創設者が失踪したらしく行方不明だったんですけど……」
「ほう。ブレーメン」
……ブレーメン?
もしかして、私ブレーメンっていう少女になっているんだろうか。髪は肩までかかるほどのロングヘア。髪の色は情熱的な赤色。身長も低いようだが……。
え、あの手鏡ってもしかしてNPCの体に入るとか、そんな感じの機能なの? ど、どうやって元に戻るんですか?
「なにせブレーメンには特殊な能力があるらしくて音色を聞くと死ぬとか言われてますね」
「ほう? 面白そうじゃの。引いてみい」
と、言われた。
近くになぜか太鼓が転がっており、それを叩けということらしい。太鼓を首にかけてバチを手に持つ。引けっていってもそんなに楽器ふれたことないんだよな。
そう思って一回たたくと。
近くにいたハーメルンが吹き飛んだ。
……え?
「ハーメルン!? 無事か!?」
「え、ええ。いてて……。衝撃波がものすごかったのですが」
「お、恐ろしい……」
もっかい叩いてみる。
すると、今度は部屋の壁に亀裂が入った。ぴしっ、ぴしっと亀裂が入り、そして、壁が崩れ落ちる。ガラガラと音を立てて崩れいく様を見るとなんだか工事現場を思い出す。
……じゃなくて!
これ、ブレーメンの能力なのかな。楽器の音楽で攻撃。
ハーメルンがサポートの音楽だとするとこっちは攻撃の音楽ということだろうか。多分ドラ〇もんでいうジャイ〇ンの歌とかし〇かちゃんのバイオリンに近いのかもしれない。
……なんで私がブレーメンになってんだよ!
あの男はある女神さまが変装を……げふん。




