珠洲の初恋の相手 ③
ゲームセンターに来ていると、驚くものを見つけた。
「邪神ちゃんぬいぐるみ……?」
え、邪神ちゃんグッズ化してんじゃん!
たしかに可愛いと話題だけどVR物のグッズってそこそこでなくない? メインに売り込むキャラも何もいないわけだしさ。
「あ、これカーリ様人形じゃん。ボクもこの子可愛いから好きなんだ。広瀬さんと葉隠さんもやってる? A2O」
「やってるよ」
「うん」
「そうなんだ! フレンドになろうよ! ボクはシルベって言う名前でやってるから第九層の冒険者ギルドで落ち合おう!」
「わ、わかった」
今日は少しA2Oやりますか。
「よし、じゃあボクはこれ狙おうかな。百円無いから両替してくるね~」
と、両替機に千円を入れて両替していた。
カーリ様ぬいぐるみはちょっとでかいな。クレーンもでかいし……。ぷちキャラ化した姿も結構可愛いな。アルテナ様とか天使とか作ってたらいいのに。
「……美咲」
「はいはい。取ってあげますよ」
「わかってるぅ! あとでアイス奢る!」
「ハーゲンダッツね」
「高い!?」
一発でいく保証はないからなー。クレーンのほうも力は少し弱いだろうし何回かは落ちるかもしれない。
最低でも二回はいるかな。私は財布から五百円を取り出していれる。そして、クレーンを動かしてぬいぐるみの真上にもってくる。クレーンがぬいぐるみを掴むが途中で落としてしまう。あと一回か。六回出来るから四回無駄になるけど。
そしてもう一回動かしてぬいぐるみをゲットし、珠洲に手渡した。
「ほいよ」
「さっすがぁ」
すると、いつのまにか畦道さんが帰ってきていた。
「ね、ねぇ、ひ、広瀬さん」
「うん? なぁに?」
「わ、私のもとってもらっていい!?」
「それぐらいならいいよ」
あと四回もあるし。
またクレーンを動かして、ぬいぐるみをとって畦道さんに渡す。大層喜んでいた。
クレーンゲームで遊んだ後に向かったのはホッケー。
私VS珠洲&畦道さんでやる。なにせ私相手だと勝てそうにないからハンデで一人っていうけど…。まぁ、こういう系は大の得意だからな!
「シュート!」
「ブロック!」
「シュート!」
「ブロック!」
ただ、防戦一方だ!
はじいてしまって相手がそれをまた打ってくるのでどうしても攻撃に回る隙が無い。そのまま打ち返すのもありだけど私は防御でしかダメって言われた。それもハンデだって。
「そろそろくたばれえ!」
「甘いんだよ」
私はホッケーの丸い円盤みたいなやつを横にはじいた。壁になん反射もしながら向かっていく。だけれど珠洲たちはうてないのだった。当たらなくてすかすかとからぶっている。
うねうねとして当たらないから私はこれをスネークロードと呼んでいる。いや、突破方法は簡単だけど。
「よし、まず一得点!」
「悔しい!」
畦道さんが思いきり飛ばしてきた。それを反射で返す。やばい、油断してた。判断する隙がなかったから焦ったぁ!
油断してたら普通にダメなんだよ……。結構不意打ちとかには弱い。
「おらぁ!」
「甘い」
珠洲は相変わらず一直線にしかうたないな。
私は珠洲が打つのを待ちながら防御の構えをとると、珠洲がにやりと笑った。そして、なんと畦道さんが左手で壁を反射して私のゴールに入れたのだった。
……珠洲がうつもんだと思ってたよ。
悔しい……。




