小学校の先生
陽菜ちゃんのお母さんと私のお母さんはどうやら親友の関係らしくて来たらしい。
で、今は下校中。いつもの道が工事中で通れないので遠回りしていた。
「美咲、ここ、懐かしくない?」
と、珠洲が立ち止まって指さしたのは小学校。
そういえばここに通ってたな。小学校はそこまで思い出したい記憶はないんだけど。いじめがあったしそこまで思い出したくはないかな。
そう思っていると、前から女子高生がやってきた。
「あれ、みさじゃん」
「朱音? どしたの」
朱音が一人でやってきたのだった。
「いや、なんか懐かしくなってさ。遊びにいこうかなって」
「遊びに行くにしても知ってる先生いないでしょ……」
「いや、私たちの担任が教頭になってここにいるらしいよ」
あー、担任。
「小学校三年のときのかな?」
「あー、唯一私の味方をしてくれた先生か」
「あはは……そうだね」
小学校、中学校にかけて信用出来た先生は少ない。
三年の時の担任は本郷先生といい、いじめを許すことはなかった正義感あふれる人だった。私がいじめられてるのを知って動いてくれていた。でも、四年生の時に入院するからって言って担任を下りた。
そして、次の先生は糞だった。いじめなんかいう厄介事には目を向けない人ばかりで、辛かったなぁ。
そう思っていると校舎から誰か出てきた。
「おや、君たちなんかようかい?」
「いえ、特に。懐かしいなって感傷にひたってたんですよ」
「母校か何かなのかな? いいねぇ、僕も昔は母校によく遊びに行ったもんだよ」
懐かしくなって、来ることはあるよな。
「ところで君たちの名前は? 僕昔この学校に勤めてたんだよ。今もだけどね……。その時の生徒かな。少し見覚えがあるし」
「あ、霧崎 朱音です」
というと、先生の顔が険しくなった。
「霧崎……」
「ごめんなさい。昔は……。広瀬さんのことで迷惑をかけて。でも今はそんなことしてませんから! むしろ仲良しですから! ね、みさ?」
「うん。そうですよ先生」
「え」
と、先生は私のほうを向いた。
「き、君は広瀬さん……なのかい?」
と聞かれたので。
「ええ。そうです」
と、肯定した。
「まさかいじめっ子といじめられっ子が仲良くなるとはねえ!」
応接間でお茶を飲んでいた。
普通はないだろう。いじめられっ子はいじめっ子を許さないだろうしね。
「三人とも可愛くなったな。高校生ともなると色気もでてくるもんだなー」
「あはは。先生。それ捉えようによってはセクハラですよ?」
「今の時代そういうのに厳しいからなぁ。見逃してくれないか」
本郷先生が笑っていった。セクハラにするつもりはないし、高校生もそれは大人なので色気とかあるものだろうと私たちもわかっている。
「霧崎。よかったな。広瀬が優しかったから許してもらえたんだ。普通、いじめっ子いじめられっ子は仲良くならないぞ? 禍根があるからな」
「あはは。それはみさに感謝です。本当にバカなことしたなって私も今思ってます」
「まぁ仕方ないさ。子供はバカなことしても気づかないもんさ。子供だって人間だから妬むのも人間の好き嫌いもあるだろうし、適応しろっていうのも酷な話だからな」
笑いながら私たちに教えてくれる。
子供たちはたしかに適応しろだのいってもわからないだろう。
「まぁ、適応させるためには担任の腕の見せ所なんだけどな。うまくやる術を身につけさせるのも本来は私たちの役目でもあるんだよ」
「うまくやる術……」
「ほら、社会に出ると嫌いな人とかともうまく付き合っていかなきゃいけないだろ? 早い話小学校とか中学校は社会の縮小版みたいなものだな。そう思うと結構気が引き締まるもんだよ」
先生はお茶を飲み干した。
「なんにせよ、霧崎はちゃんと軌道修正できたようだね。いいことだよ」
「そ、そうですか……?」
「普通、ひねくれた悪ガキはそのまま育つからねえ。三つ子の魂百までとかいうだろ? 小さいころからやってることは大人になってもやるんだよ」
「あー……」
「曲がった道をまっすぐに直すのは自分だけだからな。よく気づけた。偉いぞ」
「……ありがとうございます」
やっぱり、先生はかっこいい。
人気があった理由もわかる気がした。
昨日で連載一年じゃーん。よく頑張って書いたなー。すごいぞ作者




