コンプレックス
クッチャクッチャとガムを噛んで風船を作っていた。
「私風船できない……。どうやるの……?」
「うーん。感覚だからなー」
家には帰らずに駄菓子屋などいろいろと案内していた。
風船ガムを口に含んでぷくーっと膨らませるのが好きなんだ。
「舌で伸ばして空気をぷーっと……。ほら、シャンプーとかで泡出来たら手でシャボン玉作るでしょ? あれと同じようにやってるけど……」
もっかい膨らませて、弾ける。
「えっと……」
「まず平らに伸ばすでしょ? それで舌でちぎれない程度に伸ばして……それで息をぷーっと……」
この知識は絶対使わないだろうけど……。
いらない知識も時には必要だと思います、ええ。必要なんですね。
「あっ、へ、へひはひ」
「できました」と言おうとしたのだろうが、うまく言えず、そして、ぱあんと破裂した。
あるある。結構口周りべたつくんだよね。破裂すると。陽菜ちゃんは手でガムを取って口に入れている。
本来お菓子や食べ物では遊んじゃいけないけれど、駄菓子は遊べるから好きなんだよね。たとえばひもQとかな。あれ好きなんだよ。
「そういえば陽菜ちゃんってたけのこかきのこどっち派?」
私はきのこかな。たけのこもいいんだけどビスケットが好きなんだ。あのチョコと。うんまいのなんの。
「私ですか? 私は……基本的にはきのこですかね……」
お、仲間だ。
珠洲はたけのこなんだよなー。きのこの山のほうが絶対美味しいのに。たけのこも美味しいし、科学的にはたけのこのほうがおいしいというデータだけどそれはあくまでデータ上での話だ。人の好みがあるんだ。
きのこたけのこ戦争に私は参加しない。
「陽菜ちゃんさ、そんな畏まらなくていいよ? 私だからさ。そんな滅多なことじゃキレないって」
「え、で、でも銭湯のときにキレてたような……」
「大丈夫。巨乳を敵だと思ってるだけだから」
「やっぱりキレるじゃないですかあ!?」
気にしていることをつかれたら誰だって怒るでしょ?
コンプレックスなんだよ? 陽菜ちゃんの見た目と同じで。そこをつかれるとマジで……うん。小さい子相手だったら怒れないから多分家帰って拗ねるな……。
「そりゃおっぱいは気にしてるんだからキレるよ。見せびらかされたらちょっと気にするよね。コンプレックスなんだ」
「あ、ご、ごめんなさ……」
「まぁ、成長とかあるだろうし私はたぶん遅い方んだよ。うん。そういうことにしておいて」
「は、はい……」
「だからいいよ。気にしないで。仲よくしよう?」
「う、うん……」
と、陽菜ちゃんは照れながら微笑んでくれた。
可愛かったです。




