珠洲の謝罪
風呂でさっぱりし、帰り道。
家に帰ると、家の前で珠洲がコンビニの袋をもって立っていた。
「なにしてんの」
「うひゃあ!? み、美咲!」
珠洲は思い切り飛びのく。
「あ、あの、美咲……さん」
「なに」
今更謝りに来たんだろうか。
改善しないと反省する意味がないというのにさ。口だけならば私でも言える。反省しないと次に活かすことは不可能だ。
「さ、さっきはごめん」
「……さっきぃ?」
さっきだけが悪いわけじゃないでしょう。
今まで怒らなかった私も私だけどさ、やっぱり自分のことは自分でするべきだよ。
「い、今までごめん……」
「……謝ったから許してもらえるだろうとか、そういう甘い考えはないよね?」
「う、うん。こればかりは私が悪いしよく今まで持ちこたえたなって感じだから……」
わかってるようだ。
まぁ、今はお風呂で気持ちもさっぱりしたしそんな怒ってはいないからもういいかな。私人を怒るのもそんな得意な方じゃないし。いや、得意にはなりたくないけど……。私、ほめて伸ばすタイプだから。
「まったく。わかってるならいいよ。許してあげる。今度から自分で掃除しなね」
「ぜ、善処する……」
「……やっぱり許すの取り消しー」
「ごめんなさい冗談です片付けますから! 勉強もちゃんとやりますから! ゲーム禁止にされたらまずいんだって! 私の生命線が途切れるんだって!」
そういってる割に勉強しないから実は余裕なんでしょ。
まぁ、そんなわけがない。珠洲の学力は下から数えたほうが早いくらいだし。
「ま、ちゃんとやりなよ。今度さぼったら本当に怒るから」
「もうしません……」
「ならよし」
さて、と。
「陽菜ちゃん。こいつは私の幼馴染の珠洲」
「乾 陽菜です」
と、陽菜ちゃんが手を差し出す。
珠洲は怯えながらも手を出した。
「ふ、不良……?」
と、珠洲が漏らすと、陽菜ちゃんは俯いてしまった。私は触れないで置いたけど結構優しい。見た目がきついだけで……。
こりゃ、傷ついただろうな……。悪気はないんだけどな。
「……そうですよね。やっぱりそう見えますか」
「珠洲。謝りなさい。陽菜ちゃんは不良とは真逆の性格なんだから。自分の考えを安易に発言しないこと」
「う、うん。ごめん、乾ちゃん」
「い、いいんです。慣れてますから」
と、少し悲しそうにそういった。
「私、不良じゃないのにいつも不良にみられて……。この前飴舐めてたらたばこ加えてるって言われて警察が来たんです」
「…………」
「野球やってるんですけどバットを持ち帰ってるときもみんな避けてって……。顔が怖いだけなのに……!」
苦労しているんだな。
陽菜ちゃんは少し泣いていた。不良だなんだの言われたくないのかもしれない。こりゃ相当嫌なんだな……。
人を見た目で判断するなとは言わないけど、自分が判断した結果を信じ込むのもダメだな……。あくまで主観でしかないからその判断ができないだろうて。
「ごめんなさい。初対面の人に言うことじゃなかったですね。忘れてください」
「……と言われても。それに、不良に見られたくないなら金髪を染めて黒髪にとかしたら?」
「こ、校則で染髪は禁止と言われてるので……」
真面目だ。
クラスの女子何人かは少し染めてるんだけど。私は特にそういうの気にしないし珠洲も気にしないから染めるつもりはないけど。
「見た目とは裏腹にめっちゃくちゃ真面目さんなんですけど……」
「人を見た目で判断しちゃいけない典型的な例だよ」
……で、陽菜ちゃんとお母さんはどういう関係なんですか。




