焼肉
いい汗かいた。
他校とのバスケの練習試合。結局私の体力切れで途中で交代して負けてしまったけれどいい試合ができたと思う。
担任からは「今でも遅くないからバスケ部に入らないか?」と誘われた。相手高校の先生からも「あなたがバスケ部じゃなくてよかった」と言われた。
で、今は他校の生徒と一緒にお疲れ会をしている。
他校の顧問の先生のおごりで焼き肉だった。
たんに誘われたので来ただけだった。他校の焼き肉に参戦する意味とは……。
「いやー、すごいね。一人にここまで追い込まれたのは初めてだよ」
「お疲れー」
「本当に君バスケ部じゃないの? なんでその才能を生かさなかったんだ!」
三人の女子が話しかけてきた。
いや、そういわれましてもね。
「あ、名前教えてよ。今度一緒にバスケやろ。私は広瀬 裕子っていうんだけど」
「あ、私は黛 千里だよ」
「私は山田 華っていうんだ」
広瀬……私と同じ苗字。
いや、珍しくはないしいるのは当たり前か。
「私は広瀬 美咲です」
「え、同じ苗字なの?」
「そうですね」
「運命じゃん! 連絡先交換しようよ! 運命だしさぁ」
なんの運命だよ。
まあいいか。友達増えるのはいいことだと思うし。私の携帯は友達が少ないからね。珠洲に地衣、真野ちゃんに真綾、あと最近花園さんもいれた。あとは家族ぐらいかなー……。あと朱音も。
「はい、登録っと。さ、携帯は後にして肉食お。今日は先生のおごりだし高いのいこう!」
「おい、まじやめてください。金使いすぎるとカミさんにどやされるんだ」
「あはは! 先生が生徒に懇願してんの! 大人の矜持みせてよ」
「仕方ないだろう! カミさんは無駄遣い許さないんだから」
なんていうか、苦労してそうですねそちらの顧問の先生。
若干剥げてるし……。苦労がうかがえますわ。
「それじゃ、乾杯しよ。私はカルピスね」
「100%パインアップルジュース」
「烏龍茶」
私は何にしよ。
「私はビールいっちゃおうかな。どうせ今は勤務時間外だ。許されるだろ」
「あー、いけないんだ」
「あはは。大人だからな」
本当はダメだと思うんですけど……。
まぁ、私には関係ないか。そして注文を聞きに来たのでとりあえずジュースとハラミ、カルビだけ頼んでおいた。
そして、先ジュースが届けられる。
「よし、じゃ、美咲ちゃんと友達になれた記念に乾杯!」
「……そこまで祝うほどかな?」
「祝うほどだよ! 実はうちの高校でも美咲ちゃんの名前知られてるんだよね」
え、なんで。
「ほら、美咲ちゃんって助っ人たまにしてるでしょ? それでみんな化け物がいるって言うからさ。名前知らなかったんだけどそれ美咲ちゃんで間違いないなって思ってさ」
「あー……」
よく地衣に頼まれるのだ。
卓球部、バレー部など様々な部活の助っ人をしていた。
「バレー部の子が化け物と対戦したって誇ってたね」
「すんごい美少女だっていう話もしてたし美咲ちゃんはそれに当てはまるし」
「なにより楽しそうにやるって言ってたし」
あー……。
美少女はともかく楽しいのだから仕方ないでしょ。体動かすのも結構好きだし。
「先生もな、見てみたかったんだ。そっちの高校に通う友人が”すごい品行方正で成績優秀の非の打ち所がないやつがいる”って言ってすごい可愛いって言ってたんだよ」
「え、そんなこと言われてるんですか」
「先生も人間だからね。可愛いだのなんだのは言うよ」
「それ、私の目の前で言ってもいいんですか?」
「いいのいいの。可愛いとか思うけど誰一人不細工とは思ったことないから」
……いいのか?
と、肉が来たので網の上に乗せる。
「それにしても、美咲ちゃんは何年なの? ちなみに私たちは高校二年生だけど」
「三年生だよ。今年卒業」
「あ、先輩だったんですね!」
「いや、急に敬語使わなくても……」
敬語使わないでいいよ。気にしないし。
「高三ってことはそろそろ進路悩むころだけど進路決めたのかい?」
「いや、まだ。先生になろうかなとは思ってるんですけど」
「先生! いいねえ、こう先生を目指してくれる若者がいるってのはいいねえ。ちなみにどの教科を教えたい?」
「んー、まぁ、消去法で行くと国語か体育ですかね」
国語はいたって得意だし、体育もできる。他はちょっと教えづらいというかどう教えていいかわからないのでやめておきたい。
大学を出て、教員免許をとって……。資格をたくさんとっておくのもいいかもな。
「勉強もできるのかい?」
「まぁ、中学とか大体勉強漬けだったんで」
「すごいな。非の打ち所がないっていうのは本当だったんだな」
いや、これでも不真面目なところあると思うんだよ。
授業はさぼらないし頼まれたことはやるけど……。でも委員長とか面倒なのは基本的にやらないから非の打ち所がないとは言えないんじゃないかな。
「勉強も出来て運動もできるとかどんな才能してんの? わけてほしい」
「あはは。分けれたらね」




