朱音と珠洲とクラスメイトと… ⑦
親が迎えに来て、私はそのまま黙っていた。
父さんが車を運転している。
「父さんな、母さんによく殴られてたんだよ。母さんの子だなぁ」
「愛の表現よ」
「物理的な愛はいらなかったんだよな……」
と、父さんたちは怒らずに笑っていた。
「人を殴るのはいけないことだと思うけど、美咲はやられていたんだ。やり返すのは当たり前のこと。それぐらいで怒らないよ」
父さんは優しくそう言ってくる。
実際、後悔はしていない。ただ、親に迷惑をかけたということが嫌なだけだった。みんなにもどうにかしようと考えさせてしまって、みんなに迷惑をかけたような気がする。
「……ごめんなさい。迷惑かけて」
「気にするな。子供に迷惑かけられるのは親の務めだ」
「というか、お父さんに謝っても無駄よ。この人大抵気にしないもの。デリカシーもないし」
「そんな褒めるなよ」
「褒めてないわ」
デリカシーがないというのはわかる。非常にわかる。
「ま、そんなんだから気にするな。それに、母さんも警察には慣れてるしな」
「なんで?」
「元ヤンだか……ちょ、運転中はダメだって!」
母さんが元ヤン……?
想像がつかない……。普段めっちゃ優しいのに。あれだろうか。マスクつけて丈の長いスカート履いてしゃがんでいたのかな。
スケバン……?
「子供の前でそれを言うな!」
「悪かった! だから運転中はダメだって! 事故る!」
家に帰ってくると美鈴が抱きついてきた。
「お姉ちゃん心配したんだよぉ!」
泣きじゃくる美鈴。
私は美鈴の頭をなでる。美鈴は気持ちよさそうに目を細めた。
美鈴にも心配かけちゃったな。感情に身を任せたのは誤った判断だったかな。心配をかけさせないようには努力してたのにまた心配かけるとは……。
と、電話が鳴る。
お母さんが受話器を取る。そして、はい、はいと相槌を入れていた。
「……美咲。学校からなんだけど一週間、停学だって。騒ぎを起こしたのだから仕方ないわね」
「……さいですか」
一週間だから軽い方か。
成績には問題はないし普段は真面目だからそれほど響かない。
「あと、学校の先生から一言。―休んでメンタルとかもろもろ回復するようにだって」
「……先生」
事情は分かってるのだろうか。
珠洲が話したのかもしれない。珠洲にも迷惑をかけたな。あとで謝りに行こう。抱きついて離さない美鈴を無理やり引き離し、私は二階の自分の部屋に向かっていった。
今日はちょっと疲れたから、もう寝よう……。
いろんな人に迷惑をかけた。朱音ももしかしたら落ち込んでるかもしれない。
明日は朱音と珠洲の家に行こう。
まさかのこんな長くなるとは思ってなかった作者。
④くらいで終わると思ってた




