切り拓くバカ共との同盟
待ち合わせ場所は私たちのホームらしい。頼みに行くのだから自分たちが出向くといってやってきたのだった。
一足先にギルドホームに行くと全員集合していた。
「遅かったね。報酬でも悩んでたの?」
「いや、ちょっとリアルでトラブルがあって離脱してた」
「なんかあったの?」
「妹が体に触れただけ」
「あー、なるほどね」
納得してくれたようでなによりです。
まあそれはそれとしてもうそろそろ来るんじゃないだろうか。ギルド”切り拓くバカ共”は。ここはギルマスらしくどーんと構えていたほうがいいのかな? 少しでも威厳を……こう、ね?
「そんな気張らなくていいよ。ミキ」
「き、緊張するけどボクもいるから……」
「あ、うん」
気張っているわけではなくてどんとした心構えをだね……。少しでも威厳を見せようとしただけなんだけど……。
どうやら私は威厳を張れないらしい。ちょっとショック。
そして、ドアが開かれた。
「待たせてしまって済まない」
私とガトツさんが向かい合う。
これは私たちのギルドにも関わる。同盟というのは助け合うということ。つまり相手が困っていたら私たちも助けなくてはならない。
同盟システムというのは厄介で、同盟内容は自由に決めることができる。だから、遠回しに相手に不利益になることを書くギルドもあるそうだ。
見極めが大事。有名だからと言って信用できるわけじゃない。
まず、相手が提示してきた条件に私たちが不利になるものがないか、確認をしなくては。
「……問題はないか?」
「……特にはなさそうですね」
全体的に目を通しても気になるものはない。
「これで通してくれるだろうか?」
「……二個、付け足しておいてください。切り拓くバカ共は精霊の守護者を庇護する。精霊の守護者も切り拓くバカ共を庇護する。同盟を破棄する場合は双方のリーダーの合意が条件とだけ」
「……なぜだ?」
「切り捨てられるのを防ぐためです。同盟の内容に反したらペナルティがあるんです。利用しないわけにはいきませんよ。これをしておかないと裏切られる可能性もあるからです」
私たちは小規模のギルド。いくらでも切り捨てることが可能だ。それを防ぐため。
最悪な状況になったとしても切り捨てられたらそこで終わりだ。道連れにしなくては同盟の意味がない。
本当はこういうのしないほうがいいけど、傷つきたくないからね。
「わかった。付け足しておこう。これで満足だろうか」
「はい」
同盟破棄についても述べたし大丈夫だろう。
同盟システムは過半数が賛成だった場合破棄されるのだけどあっちのほうが圧倒的に多いから破棄の権利が実質私たちになくなってしまう。なら最初から権利はリーダーに、だ。
《切り拓くバカ共と精霊の守護者の同盟が成立いたしました》
そのアナウンスが頭に響いた。
「ふぅ……。もう堅苦しくなくていいですよね。ちょっと真面目になったら疲れました」
「そうだな。俺もちょっと楽にさせてもらうよ」
力を抜いた。
椅子にだらーっともたれかかる。
「俺は別に切り捨てるつもりないからな。そこは信頼してほしかった」
「念のためですよ。少しでも予防線をね」
「はは、ミキさんはすごいな」
「そんなことないですよ」
私なんかはすごくないんだ。
「さてと。じゃあ、早速ミキさんの知識を貸してほしい」
「はいはい。わかりました」
もちろん私たちはウィンウィンの関係だ。
私は知識や考察を、ガトツさんのところは設備を貸してもらうことになった。大規模となると生産職もトップを走る人たちをいれるらしい。
そして、それを受け入れたのはサンのため。生産のレベルを上げてほしいという願いの元だ。
「今から第二層のボスに挑戦する。パターンの考察を頼みたい。できるだろうか」
「やってみますよ。拒否権はなさそうですしね」
「わかってるな。俺たちのこと」