懐かれたスルト
最近労働意欲がめっきり減ってマイナスになってるやばみ
山賊たちはそれほど難しい相手ではなくすぐに終わった。解放された獣人たちは大喜びで外へと向かう。身体能力がバカ高いのか壁ジャンプしていっていた。すごい。マ〇オみたい。
と思っていると、背中におんぶされていたリリエが私の背中から飛び降りて犬耳の女性の元に向かっていった。胸デカい……。くっ……。
「お母さん!」
「リリエッ!」
二人は熱く抱き合っていた。
親子の絆とでもいうべきなんだろうか。素晴らしいとは思う。スルトも満足げな顔をしている。
「ありがとうございます! 娘を保護していただき、それに助けていただいて」
「構わねえよ。頼られたから助けてやっただけだ」
スルトって案外面倒見いい性格してるよね。
私たちは外に戻ることにした。地下はじめじめしていて居心地がいいような空間ではなかった。じめじめしていたし、ゲームじゃなかったらちょっと入るの戸惑っていたかもしれない。
リリエちゃんはお母さんに抱えられて少し笑顔になっていた。
「本当に村を助けていただきありがとうございます。人間にもあなた方のような善良な方がいてとても安心しました……」
「善良……か。俺には似合わねえ言葉だな」
と、スルトは真っ向から否定した。もともと彼は山賊だったのだし善良とは程遠いのかもしれない。けれど、なかなかいい人だとは思っている。
彼が山賊をしていた理由は、多分国への不信感……かもしれないという淡い希望を持っている。
「じゃあな。母親と仲良くしろよ」
と、スルトが立ち去ろうとすると、リリエちゃんがスルトの腕を掴む。
スルトはリリエちゃんを見る。リリエちゃんは顔を上にあげていた。
「いっちゃやだ」
と、引き留めていたのだった。
リリエちゃん自身スルトに懐いていた。獣人は懐くとなかなか離れないというのは人間の間でも知り渡っており、なんとか懐かせようと必死になる輩がいるとマツリから聞いた。
だからこそ獣人を手の内にと躍起になっていて破滅したという貴族もいるとか。
「……」
わがままを受けたスルトは困ったように頭を掻く。
「わがまま言わない。人間さんには帰るべき場所があるんだから。ね? バイバイしよ」
「やだよ!」
と、スルトの腕を握って放そうとしないリリエちゃん。
スルトは抵抗するわけにもいかず困った顔をしてこちらを見てきた。いや、どう助けろというんだろうか。
助けられない代わりと言っては何だけれど穏やかな視線を送ることにした。
「おぉ、ここにおられましたか」
と、声が聞こえる。エルフの長らしき人が転移してきたのかこちらに近づいてきた。
隣にはシズクちゃんとその母親がいる。シズクちゃんもスルトのもとにとてとてと駆け寄っていって抱きついたのだった。
一人増えたことを少し嘆いていた。
「シズクがのぅ、お主といたいと珍しくわがままこねるもんだから一緒に行きなさいといったんじゃ」
「その手があるか! お母さん! 私もおじちゃんといくぜ!」
「り、リリエっ!」
心配なのか引きはがそうとしている。
「人間はこのおじさんみたくいい人ばかりじゃないの! 怖い人ばかりなの!」
「それでもいく!」
と、断固としていこうとしている。
「……まぁ、好きにさせてやんなさい。この人間たちならばきっと守ってくれるじゃろうて」
「……そうだぞ。リリ」
と、お母さん獣人の背後から犬耳を生やした男性が近づいてくる。男の獣人も可愛いな……。
「娘がした決断だ。見守ってやりなよ」
イケメン……!
元からなきに等しい労働意欲がさらになくなるとか作者絶対ニートの才能ある




