閑話 逃げる少女
森の中。二人の少女は走っていた。獣耳の少女と耳が長い少女。獣人とエルフだ。
「お母さんたち大丈夫かな……」
「そっちの心配しない! きっと大丈夫だから!」
少女たちは、ひたすら走り続けていた。
何かから逃げるように、必死に足を動かしている。後ろを振り返ることは決してせず、前だけ見て走っていた。
息が切れていく。次第に速度もどんどん落ちていった。
「はぁ……はぁ……。もう無理だよリリエちゃん……」
「シズクちゃん!」
足を止めてしまった。リリエと呼ばれた犬耳の獣人少女はシズクというエルフの元に駆け寄る。
「わ、私がおんぶするよ」
「い、いいよ。リリエちゃん。私足手まといだからリリエちゃんだけでも逃げるようここで抵抗してるよ」
「やだよ! 二人で逃げるの! シズクちゃんをおいてけない!」
その時だった。
大男が目の前に現れた。二人の前に現れた男。驚いて思わず飛び跳ねてしまった。だがしかし、体勢を整えてリリエは威嚇する。グルル……! と牙をむき出しにしていた。
大男は困ったように頬をかく。
「人間……!」
リリエは手を伸ばしてくる大男の腕にかみついた。大男は顔をしかめるが、リリエという少女を捕らえる。
「リリエちゃん!」
「はなせ! 私をどこに連れてく気だ! お前ら人間なんかのために働かないぞ!」
「落ち着け。治療をしてやるだけだ」
そういって大男は歩き出す。
シズクはその男についていった。危険かもしれないけれど、リリエだけ一人置いていけないという心配から。一人より二人で行ったほうがリリエも安心するだろうという考えだった。
そして、大男はリリエを地面に下ろすとリリエは顔をしかめる。
「お前ら、毒キノコ食っただろ」
「毒キノコ?」
「茶色くて黄色い斑点が付いたやつ」
「食った……が、それがどうしたんだよ」
「あれ、毒だぞ。見てみろ。腕」
と、少女が腕を見ると、紫色に染まっていた。
なんだこれと、少女は驚く。
「あれはムラサキダケ。遅効性の毒で全身が紫色に染まったら死ぬやつだ。解毒は簡単で食用であるキイロタケを食べればいい。ちょうど採りにきてたからな。食わせてやる」
男は火をつけ、キノコをあぶる。
食用とはいえ生で食べれない。熱を通すと解毒成分が高まる。彼は独学でそれを学んでいた。
キノコをあぶる彼の横に、エルフの少女が座る。
「……私たちを売らないんですか」
「売るってどこにだよ」
「その……奴隷商館に、とか」
「……んな稼業からは足を洗った。今はそんなことしねえよ」
キノコを見ながらそう話す。
シズクはそうですか……と安心したように息をつく。リリエはまだ疑わしそうにこちらを見ていた。大男を睨む。
男はキノコが焼けたのを確認し、キノコが刺さった串をリリエに手渡した。
「ほれ、食え。治るぞ」
リリエは恐る恐る手に取る。そして、目をつむってかじりついた。ちょっぴり振ってある塩がなんとも美味しくて、がぶがぶとかじりついた。
気が付くとキノコがなくなっていた。
「美味しすぎるからなそのキノコ。無理ねえよ」
「……まだないの?」
「あるっちゃあるが……。これ、卸すようだから無理だ」
「むぅ……」
「ここら辺にはもう生えてねえだろうし採りにいくとしても日が落ちてきている。明日だな」
リリエは悲しそうに男を見た。
「俺は戻る。お前らも来るか?」
「いくって…どこにですか?」
「人間の街のある屋敷だ。俺が働いているところに」
「……どうする?」
シズクは聞いた。リリエは、考えて、何かを決意したのか、ついていこうといった。
男はそれをみて笑う。
「なら、さっさとこい。何かに追われてるんだろう。明日そいつらを探してとっちめてやるから。今日は俺のとこで休め」
男は笑った。
逃げたのはこの二人だけではありません。もっといますが、この二人はその逃げた人の一部ですね。
エルフの村と獣人の村から逃げだした二人です。大男は多分予測ついてると思いますが作中にすでに登場してます。ここまで言えばわかるでしょう。




