お熱いことで
イチャラブ回です。
新たな王の任命でゼウス様は大忙しだった。
国中にお触れを出して王となったことを伝えるのと、その声明を宣言するための場を設けたりだとかいろいろ大忙しで動いていた。
「夫がここ最近忙しそうなんですけど何か知りませんか?ミキさん」
「さぁ……」
私はヘラ夫人とお茶をしていた。
チリンも隣に座って紅茶を啜る。ヘラさんはマイペースな人でよくボーっとしている人だった。それと、アルテナ様に通じる天然っぷりがある。
アルテナ様もひどい天然だと思うけれど……。正直天然さでは神に渡り合えるほどだと思うんだ。
「このクッキー美味しいですね。誰が作ったんですか?」
「私ですよ~。こうみえても私料理は得意なのです!」
ふふんと鼻息を荒くする。
得意げにない胸を張る。うん、同士だな。私もないんだ。お互い無い同士仲良くしようね? 約束だよ? 裏切りは許さない。ウリエルは裏切ったんだからね。
「いや、でも本当においしい。今度作りか」
「あ、ゼウス様が帰ってきました!」
……話を遮られた。
ヘラさんがおーいと大きく手を振っている。ゼウス様は少々やつれていた。どんよりとした空気でゆっくり歩いてくる。
おいおい。生気なくなってんぞ。あれは社畜の眼だ……。
「どうしたんです? 元気ないですね。笑顔大事ですよ」
「こ、こうかい……?」
「笑顔が足りません。もっとにこーっと!」
疲れているから笑顔になる余裕もないんだろう。ゼウス様もとっとと奥さんに王になるということを伝えるべきなのに。いい人すぎて「王妃となりたくなかったらどうしよう。と、とりあえず王になる準備を全て済ませた後に王妃になる覚悟があるか聞きたい」といって秘密にしているらしい。
まぁ、王妃となる以上今以上の重圧があるのはわかるけど……。いきなり王妃になれっていうのも意外と酷だと思うんだけど。
「笑顔大事ですからね! 笑顔のゼウス様素敵です!」
「そ、そう。ありがとう。元気出たよ」
ら、ラブラブだなぁ。
こう今も仲良さそうな夫婦ってすごいと思う。喧嘩して嫌になって離婚とかも考えられるし。私も結婚するならすべて受け入れてくれる人がいいな。
私のフェチなところとか……。妬み嫉みも受け入れてくれる人。
まぁ、その前に相手見つけなくちゃいけないけど。
「ミキ様。声明を出すのは明日にしました。もう早めにやったほうがいいと言われたので……」
「声明?」
ヘラさんがなんのことと聞いてくる。
ゼウス様は、ふぅっとため息をついた。
「ヘラ。心して聞いて」
「???」
「わ、私はな、この度……」
「……あっ、クッキー焦げる!」
「王になることがっ! ってどこいくんだ!?」
ヘラさんは急いで家の中に入っていく。
クッキー焦げるって……焼いたままだったの!? いや、私たちがここにきて結構時間たつしヘラさんもずっとここにいたから焦げてると思いますよ。
すると、ヘラさんは黒焦げになったクッキーを持ってきた。
「……焦げちゃいました」
「でしょうね……」
「一回目は時間忘れなかったのですが二回目は話してたせいでクッキー焦げました……。苦い……」
ヘラさんは涙を流しながら焦げたクッキーを食べている。
いや、食べるんじゃないよ……。
「……ヘラ。王妃になる覚悟はあるか?」
「王妃? ありますよぅ……。って、王妃になる?」
「あ、ああ」
そういうと、ヘラさんの頬に一筋の涙が伝った。
「離婚して王のもとに嫁いでいけと……? ぜ、ゼウス様がそう望むのなら……」
「違う! 私が新しく王になることが決まったから私の隣に立ってくれるかっていうことで!」
泣きじゃくるヘラさんを介抱していた。ゼウス様の服には黒いクッキーのカスがぽろぽろと落ちていく。
「よかった……」
「言葉足らずだった。すまない。で、返答はどうだ?」
「はい、しか選択肢はありませんよ。私はあなたの妻なのですから。いついかなる時もそばにいるのが妻の役目です」
「ヘラ……!」
「ゼウス様……!」
あー、お熱いことで。
(ゼウスとヘラの)イチャラブ回です。




