利用されていた
ミカエルたちは進化……もとい元に戻れた。
ルシファーもアルテナ様が取り戻してきてくれていた。
「さて、私はクロを始末してきます」
と、ワープしていった。
地下牢に取り残された私たちはとりあえずこの場から出ようという話になった。地上に出ると、マツリが椅子に座っている。私の姿を見て笑顔になっていた。
「無事だったのですね!」
駆け寄って私の手を握ってくる。
涙を流して喜んでいた。この子いいこだなぁ……。なんて思いながら私も微笑んだ。私が死刑になんかされるわけがない。むしろ死んでも生き返る……。
「うん。ごめんね」
「いえ、こちらこそ巻き込んでしまい申し訳ございませんでした! 犯人はどうやら私を狙ったつもりだったそうで皿に毒が塗られていたそうです……」
「そうなんだ」
マツリは嬉しそうに語る。
だがしかし、後ろにアルテナ様が立っていた。どこのホラーだ……と思ったが、ふと嫌な予感がする。アルテナ様が立っているということは、この子は……。
「……自分で毒を盛ったのでしょう」
「……へ?」
「そうだよね。私を捕まえさせるためにわざと自分の皿に毒を盛ったんじゃないの?」
アルテナ様が立っているということは、クロ……かもしれないということ。
クロは始末するとか言っていた。
「……バレちゃいましたか」
と、マツリは目を伏せた。
……やっぱり。なんで自分の皿に毒を盛ったんだ。
「まぁ、話す予定ではありました。アルテナ様。申し訳ございませんでした」
と、剣を突きつけられ、マツリは手を上げる。
どういうことだったんだろうか……。私は信じていたのに、私を陥れるなんてこと……。この国には信じられる人はいなかったのか……?
「ですが、私はミキ様を庇う予定ではありました。処刑なんて絶対にさせない、私はいいことをしたつもりであるということだけは知ってください」
「いいこと?」
「私は、ミキ様を信頼して毒を盛ったんです。ミキ様なら地下牢の隠し事を暴いてくれると、アルテナ様の使いならどうにかできるだろうと。そう思ってわざと捕まらせたんです」
「……私が?」
つまりこの子はミカエルたちのことを知っていた……?
だがしかし、止めることはできなかった。その時に来たのが私。私ならどうにかしてくれるだろうという考えの元だろうか。
私が動かなかったらどうしていたんだろう。
「……嘘ではないですね。この子は良識はあります」
と、アルテナ様は剣を下ろした。
「利用してしまい申し訳ございませんでした。ですが、止めるにはこうするしかなかった。私みたいな辺境伯の娘ではどうにもできなかったのです」
マツリは地面に座りこむ。
知ってて、それを止めようと動いたんだろうか……。
「ミキ様。アルテナ様。バツは受けましょう。天罰を与えくださいませ」
と、マツリは地面に大の字で寝転がった。
……利用されていたことは嫌だった。せめて一言貰いたかったなぁ。
「与えません。クロよりのシロだと確信しました」
「そうですか。ありがとうございます……。神の恩情、ありがたく受け取りました」
ほっと一息をついていた。
「それに、もとよりあなたはシロだということはわかっておりましたし。ミキ様に報告しなかった罰です。ビビりました?」
「……それはもう」
「ミキ様は相談したら乗ってくれたと思いますよ。ミキ様を信じなさい」
「はい……」
まだどこかでは信じてもらえていなかったんだな。だから言えなかった……なるほど。
「ミキ様。申し訳ございませんでした。利用するという形になってしまい」
「いいよ。だけど、言ってね? 捕まるくらいなんともないけど少しビビるんだから」
まったく。
マツリは地下牢のものを知っていたのですが、辺境伯であり王に訴えようにももみ消されてしまったんですね。どうしようかと思案している先に神の使いミキがきたんです。治癒魔法を使える……ゼウス様の奥さんヘラを治せるほどの治癒能力を持つということがわかり、誕生日パーティにしでかしました。
屋敷で見てないところでやればいい、というかもしれないけれどやるにはチリン達が邪魔でした。なのでミキだけ参加したパーティでやったんですね。
悪い奴ではないです。自作自演で陥れるためだけにやったとかそんな理由はないです。