閑話 国の崩壊
王城。謁見の間。
王が鎮座し、勇者と面会をしていた。勇者はへこへこと気弱な返事をしながら適当に会話を流していいる。王は期待しているらしく笑顔のままだった。
その瞬間、謁見の間に純白の女神が現れる。
「何者だ」
「私です」
その声、容姿を見て王は驚愕した。
アルテナ様がきた。わざわざ勇者を送り出すために。これはチャンスだと王は考えた。勇者というものを送り出すのはどの国もやっている。魔王を倒せた国が強大な力を手に入れられる。だからこそどんな支援でもほしかった。神が来たならば問題はないと思ったのだった。
「アルテナ様。勇者様のためにわざわざ……」
その瞬間、アルテナはギロリと王を睨む。王に一瞬で近づき、王を持ち上げた。
「な、なにをなさるのですか!」
「なにをなさるか。そのまま返すとしますよ。あなたがたこそ、私の子になにをなさっていたのですか?」
ぎりぎりと頭をしめる。
王は頭を押さえた。
「なにかしましたか?! 無礼を働いたでもいうのなら詫びます!」
「詫びて済む問題ではないのです。敬う気持ちはなくてもいいのです。が、あなたがたは調子に乗りすぎましたね」
調子に乗りすぎたといわれた王はなんのことかさっぱりわからなかった。
だがしかし、わからない、で許すほどアルテナ様は甘くはない。神を敬う、畏れるという気持ちが足りなかった王、貴族の末路。
騒ぎを聞きつけたのか大臣が謁見の間を開けた。
「何事ですか!」
「大臣! 助けてくれまいか……」
「王!?」
アルテナ様は大臣を睨んだ。そして、大臣に向かって思いきり王を投げる。
「私は今虫の居所が悪いのです。あなたがたが私にした仕打ちのせいですが」
「な、なにかなさいましたでしょうか」
「とぼけても無駄ですよ。天使の力を奪っておいてとぼけるとはその勇気だけは称賛してあげましょう」
アルテナは二人に近づいた。
恐怖のあまり逃げ出そうと一目散に扉まで走ろうとするが、空中に浮いている。アルテナによって浮かせられていた。
神を目の前にして逃げられると思った思考回路も褒めるべきである。
「今回は貴方方の償いだけで許してあげましょうか。この国、シュプレーヒ王国は本日をもっておしまいになります。もちろん王と大臣。天使の力について知っているのはお見通しですので無駄なあがきはしないでくださいね」
「う、うわあああああ!」
アルテナは二人を天界へと転送した。サンダルフォンによって捕らえられ、ウリエルによって裁きを与えられる。
もちろん手を出したウリエルに許してもらえるわけがなかった。必死こいて許しを乞いても無駄。天界で一生奴隷となって過ごすことを余儀なくされるのなら、まだ軽いかもしれないが……。その結末はないに等しい。
アルテナは、ほっと一息をつく。
「さて、残りのルシファーの力を解放しましょうか」
アルテナは玉座を持ち上げた。すると、そこには結晶がある。ルシファーの力を凝縮した結晶だった。それをもってアルテナはワープした。
「……すげえ。本物の断罪を見た気がする」
一部始終を勇者が見ていた。
そして、この出来事はシュプレーヒ王国を崩壊させ、マクラベル王国が生まれた。王族の従兄であったゼウス・マクラベルが王の後を継いだという。
王族はすべて身分を剥奪。遠くへ送られた。
そして、滅びたシュプレーヒ王国は神の怒りを買った国として語り継がれるのであった。
この話と全く関係ないのですが短編書きたいな…って今思ってます。
いや、異世界モノとかじゃなくて普通の恋愛。いや、普通じゃないかもしれないけど…。書こうかしら。