捕らえられていた天使 ②
(昨日スマブラやって手直しさぼってたなんて言えない……)
アルテナ様は看守を睨む。ベノムはウリエルとミカエルを担ぎ上げていた。
アルテナ様の怒りに触れた看守は、逃げ出そうとした。が、鋼鉄の扉を勢いよく閉ざされる。逃げ場はなくなり、アルテナ様は看守に近づいていった。
「答えなさい。ウリエルとミカエルの分体を、どうしていたのですか」
冷酷な目をしたアルテナ様の問い。誰も答えることができなかった。
恐れているのか腰を抜かしている人ばかりだった。出ようと扉に縋りつく人もいる。アルテナ様の怒りを買ったのはお前らなんだから。仕方ないだろう。
すると、ウリエルたちは急に光出す。
「な、なにこれ!?」
「痛え~~~~!」
叫び声を上げる二人の天使。進化?
分体はいつの間にかなくなっており、二人が進化している。進化、というより元に戻っているという感じが強いような気もするが。
光が止むと、そこには大人の身長になったウリエルとミカエルがいた。
「おお、成長した!」
「これでガブリエルたちと並んだな」
四人の天使は背比べをしていた。
ベノムはそれを呆れたように見ている。私が見ていることに気が付いたのかベノムはこちらに近寄ってきた。
ベノムは私の隣に立つ。
「……彼女たちは本来の力を失っていたのですよ」
「本来の力?」
「昔、天界が崩壊したとき、人々は天使の力を奪いました。ガブリエル、ウリエル、ラファエル、ミカエル、ルシファーの力を。そのため、弱体化していたのです」
「弱体化……」
元に戻ったって、分体を吸収したから戻ったんだろうか。
「ガブリエルとラファエルは違うところで戻ったけどそれはなんで?」
「おそらく分体を誰かが倒したのでしょう」
となるとミカエルたちが相手していたゾンビの中に分体がいた、と考えるのが妥当かもしれないな。
それにしても、天使の力を何に利用していたんだろうか。と考えるとある考えが浮かんだ。
魔法。
もしかしてなんだけどこの国でごく少数しか魔力を持てないのは天使の魔力を奪っていたからなのではないだろうか。
この国全体に天使の力を与えるにしても広すぎて無理……だとするならば、魔法が使えない人が多いのもわかる気がする。
「な、なぁ。俺場違いか?」
と後ろから声をかけてきたのはスルトだった。
「いや、そんなことは。手伝ってくれてたし場違いじゃないけど」
「ならいいんだが……。合の嬢ちゃんたち何もんだよ。背中に羽根生えてるが……。ハーピーか?」
ハーピーってあの人間の体で鳥の羽をもつ種族だっけか。
違う。天使。
「天使だよ。神に仕える」
「……となるとあそこにいるのはアルテナ様か?」
「だね」
スルトは驚いたように頭を地につけた。
地面に座り、祈りのしぐさをしている。
「そこの人間」
すると、アルテナ様が振り返り、スルトのほうを向いた。スルトは固まってしまう。
「ウリエルを助けようとしたこと、感謝します。ウリエルだと力が足りず大変なことになっていたでしょう。貴方のおかげです」
「そんな……。俺はミキの手伝いをしただけで」
「ふふ。そうですか。ですが助けていただいたのは変わりませんね。悪いことをしている山賊がこの中で一番の善人とは笑わせてくれるものもありますね」
たしかに。スルトは今回いいことばかりしているような気がする。
「……ん?」
そういえば、今気づいた。
「ベノム。天使の力奪ったっていってたけど、ウリエル、ガブリエル、ラファエル、ミカエルの四人だっけ」
「ルシファー、も奪われておりますが」
「……となると」
「……そうか。ルシファー」
ルシファーの力もこの国のどこかにある可能性が高いな。
神の怒りを恐れない人間。この国の偉い人たちは恐れを知らないのかもしれない。神の怒りを買ったとも知らずぬくぬくと暮らしているんだろうな。