理想郷は我が家にあり
やっと十分が経過した。私はログインをしようとヘッドギアを――
「美咲ちゃーん!」
聞いたことある声がして急いで駆け降りていった。
すると、そこには真野ちゃんが小さく手を振って立っていた……!
「ま、真野ちゃーーーん!」
「どうもー。遊びに来たよん」
私の好きな人、生出 真野ちゃん。
真っ白いワンピースに身を包んだ彼女。私は自分の部屋に案内をした。
「美咲ちゃんはなにしてたの?」
「A2Oしてました!」
「相変わらずだね」
真野ちゃんは微笑んだ。
そういや最近は真野ちゃんログインできてないけどどうしたんだろう。仕事忙しいのかな?
「そういえばもうそろそろでイベントあるんだっけ。そろそろログインしたいな……」
「え? イベントならもう始まってますy…「本当に!?」は、はい……」
真野ちゃんがつかみかかってきたので思わず身を引いてしまった。
というか、知らなかったのか……。私も今日知ったばかりなんだけど真野ちゃんも知ったばかりなんだな。シンパシーを感じる。嬉しい。
「あああ! 明日だと勘違いしてたあ! くっそぅ……」
「ど、どんまいです」
「最近仕事忙しいから曜日感覚とかなくなっちゃってさあ……。テレビのドラマで忙しいわ、バラエティとかでも忙しいわ……A2Oろくにできないんだよねえ。帰ってきたらすぐ寝ちゃうし」
「お疲れ様です。休みって次いつなんですか?」
「イベントのために明日取ったんだよ。でも今日だったとはなあ……」
がっくりと、肩を落としていた。
勘違いして明日休み取っちゃったんだ……。可哀想だなあ。少しさぼることをしたらできたんじゃないんだろうか。いや、それだと迷惑になっちゃうか……。
「今から急いで帰ってやるのは無理なんですか?」
「あ、いや、今密着取材されてるからさ……。あ、そうだ。この家にカメラ上げていい? 私の友達ってことで紹介したいんだけど……」
「大丈夫ですよ! 真野ちゃんのためならば!」
真野ちゃんの頼みは断らないんだ!
「わかった。うん、じゃあ上げさせてもらうね」
と、真野ちゃんは部屋から出ていった。
それにしても密着取材かあ。やっぱ芸能人だなあ。忙しそうだし、私と住む世界はやっぱ違うんだろうなあ。
住む世界は違うのは当たり前。だって真野ちゃん神だもん。神様なら住む世界は当然違うよね、うん。そんな神様が私の家に……!
極楽浄土は我が家にあり。
「真野ちゃんどうぞ」
ソファに座った真野ちゃんにお茶を出す。
お母さんが私たちに秘密にしている高級茶葉。怒られるのを覚悟に使わせてもらいました。真野ちゃんのためなら叱られていい。
「ありがとう!」
受け取った真野ちゃんはふーふーと冷ましながら飲んでいた。かあいい。
「それにしてもさ、美咲ちゃんって家庭的で優しくて……可愛いよね。私のお嫁さんにならない?」
「ふぇえ!? そ、そそ、そんな! 私如きが恐れ多い!」
プロポーズ!
いや、男性と付き合うより真野ちゃんと交際したい。けど、日本の法律が邪魔をする! 同性婚できないからなあ……。
「如きって……もっと自信持ちなよ? 美咲ちゃんは本当に可愛い……」
「ごふっ……」
やばい。鼻血が……。
「大丈夫!?」
「大丈夫です。興奮しすぎました……」
「な、ならいいけど……。でも興奮しすぎはよくないからね? 可愛さが台無しに……」
「ごふぅ!」
「なんで激しくなってるの!?」