君の〇は。
三人で王都下水道の掃除をしている。
ティアモは人が変わったようにごみを集めていた。
「あれ、これなんだ……?」
ティアモは一つの石板を手に取っていた。
「先輩、なんか変なのありました!」
「変なのねぇ」
ティアモから石板を手渡される。
いかにも怪しい石板だけど……。触ったところで何も起きないな。うっすらと文字が書いてあるし……。日本語……ではなさそうだけど。
英語に近いようなアルファベットだけれどどこの文字かもわからないな。
「なんなんだこれ」
石板をじっくりと観察するけれど特に変わったところはなさそうだ。
「ん? それは……」
ルシファーは石板を手に取り眺めている。
お、何かわかるんだろうか。
「懐かしいですね。これは天界の教科書みたいなものです。随分と昔の……私が堕天する前のですね」
……すごい骨董品じゃないか。
天界の教科書……それもルシファーが堕天する前の……。そんな古いものがこの世界に落ちているのか。しかも風化していない。綺麗にすればまだ使えそうだ……。
「これには天使魔法というものがあるのです。もっとも最近はガブリエルが教科書を作るので石板はいりませんが」
「天使魔法?」
「ああ、天使特有の魔法です。我も一応習得はしております。天使魔法は精霊魔法、人間魔法と違い主に回復に特化しているものが多いですね」
「人間魔法? 精霊魔法?」
ティアモは魔法の種類がわからないらしい。
「人間魔法は大体のプレイヤーが使う魔法だよ。回復魔法も攻撃魔法も使えるオールラウンダー的な。精霊魔法はたぶん攻撃に特化した魔法」
だから回復を覚えたとしても回復:小なんだ。理由がわかる気がする。威力があるし、魔力の関係もあるだろうけど精霊魔法が単に攻撃特化だったんだ。
……だとすると今回復も出来て攻撃もできる私って人間魔法の上位互換みたいなものじゃね?
「流石です主」
正解か。
「そうなんですねぇ……。先輩さすがで……おっと」
ティアモが抱きつこうとしたが手前で止まっていた。
すごい。この子まじすごい。もはや変わっている。本当にティアモと同一人物なのか?と疑うくらい変わってる。
「すいません……。気を付けるといったばかりなのに」
「いや、抱きつこうとして止まるあたりもう変わってるなぁ……と思うよ。イイ感じ」
「先輩……!」
「……まぁ、目は正直だけど」
目は変わっていない。だがしかし行動はなくなった分まだいいかな……。
まぁそれはそれとして。この天使魔法を見てみたいものだな。
「ルシファー、この魔法使える?」
「使えますがよろしいのですか」
「うん。使ってみてよ」
「わかりました。ではミキ様とティアモに使わせてもらいますね」
複数人じゃないとできない魔法なんだろうか。
目が覚める。
目の前にはルシファーが顔を覗き込んでいる。相変わらず可愛い顔しやがって……。
「お目覚めですか。ミキ様」
「うん。まぁ」
地面に寝かされていたんだろう。そういえばティアモはどこだろう。と思ってふと横を見てみると私が寝ていた。
……あれ?
「ねえ、隣に私が寝てない?」
「ティアモですよそれは」
「え?」
「この天使魔法、体を入れ替えるんです。誰かの面白半分で考えた魔法ですね」
……まじですか。
となると、今は私はティアモの中に……。なんちゅうことだ。
「ルシファー、元に戻して!」
「わか……あれ?」
……どうした。
「すいません主! 我としたことが解除呪文を忘れてしまい……!」
「……は?」
「ガブリエルに聞きに行きますので少々その体でお待ちを!」
とルシファーが消えた。
……少々ってどんくらいですか!?
これはティアモじゃなくてミキが悪い。




