王都下水道 ①
「先輩! 一緒に帰りましょうよ!」
昇降口で待ち構えていた彼女。
私は、きっぱり言わないといけない。もとはといえば曖昧な返事しかしていない私が悪かったんだ。だからこそ、本当の気持ちをぶつけなくてはわからない。
「花園さん。君の気持ちは嬉しいけど、はっきりいって君が苦手だよ」
「……え」
花園さんは固まっている。
傍から見たら私が悪役だろうし、もしも私が男なら恨まれているかもしれない。だがしかし、言わざるを得ない。
「迷惑。もうやめて」
「…………」
花園さんは目から涙をこぼす。
泣いたって無駄だよ。泣いて許してもらえるのなら私だって泣いていた。泣いても許してもらえないこともある。
「なんでですか!? 私の何がいけないんですか!? いけないところ全部直しますから! 見捨てないでくださいっ!」
「……断ってもなお縋りついてくるところ。自分のためならば他人に迷惑をかけてもいいという思考。その他もろもろ」
断罪する側って結構辛いものがある。けれども、早めに対処しておかないともっともっとひどくなる一方だ。
自分が悪いと気付いてるだろう。けれども、それを受け入れている。だからこそタチが悪い。
「私だけに迷惑かけるならまだしも神林君とか他の人に迷惑をかけるってのはもう許さないよ。はっきり言おうか。私は花園さんが嫌い」
私はそれだけいって後にした。
……帰って早くゲームでもしよう。
冒険者ギルドにいってクエストを受ける。
現在のランクはDランク。先日Eランクから無事昇格を果たした。
「さてと、今日も一日頑張るぞい」
ぞいぞいしながらクエストを受けることにした。
Dランクはゴブリン討伐などもあるらしい。うーん。ならこれかなぁ。手に取ったのは王都下水道の清掃。どうにも汚くてやりたい人がいないらしい。Dランクとしては結構報酬がいい。
下水道ということはゴミを片す作業でしょ? やったことある。
「これ受けます」
「はい。かしこまりました」
受ける手続きを済ませて、王都下水道に向かった。
下水道はとても異臭を放っているらしくルシファーは鼻をつまんでいる。
水は茶色く濁っておりゴミも散乱していて……。ヘドロが出来上がっている。誰も受けたがらないわけだよこれは。
匂いは感じないよう設定したはずなのになんだか臭く感じてきた。臭い……。
「わ、我が主のためならばヘドロだろうが片づけてみせます……」
「ごめん。呼んだ私がばかだった……」
これはさすがにルシファーでもきついだろう。
いや、清潔面から考えて。いや、これ公害レベルだろう。とっととやってしまおうか。綺麗にする魔法はないからとりあえずゴミを片付けて……。
考えてくれるようになればねえー。ティアモもさー。




