郊外の孤児院 ③
アルテナ様の発言で場が騒然となった。
いきなり滅ぼすといわれてもそれは信じられないかもしれない。が、この国は私も嫌だとは思うし仕方ないのかもしれない。受けるべき罰。因果応報。悪いことは巡り巡って自分にやってくる。
「正直、私でもこの国を調べてみました。スラムの件などもすでに調査済みです。そして、その事実を見て私は失望しました」
アルテナ様は淡々と告げる。
人を思うアルテナ様は結構ドライだったりする。思うようにいかないと結構怒ったりするんじゃないだろうか。まあ出しゃばりすぎな面もあるけれど。
「基本的に私は人に介入しないようにしております。が、つけあがりすぎです」
と、淡々と述べていく。
「神を恐れず神の領地まで侵攻していく人間。敬う気持ちはこの世界の人に欠如しています。いや、具体的に言うと貴族……でしょうか」
「貴族……」
「平民から搾り取り裕福に暮らす……。善良な貴族もいますがごく少数ですね」
カリオス伯爵、マクラベル公爵。
私が今のところ信頼している貴族だ。
「この国を変えましょうか。それを望む者が多数いますから」
「アルテナ様……」
「そ、その! 私たちは普段通り生活できるのですか?」
「保証しましょう」
アルテナ様は微笑んだ。
国として……王を潰すということだろうか。
「信仰心はこの国にはそれほどありません。一部の村や街、あなたがたなどの信仰者がおりますが……自分たちの土地だと人間はいっているそうですね」
ここは神が創りし土地。人間はただ間借りしているだけにすぎない。
そら神が怒るのも仕方がない。人に尽くしてたとはいえ感謝の心を微塵も感じなければやる意味がないんじゃないだろうか。
「いい機会です。思い知らせましょうか」
「……アルテナ様キレてる」
「キレてません。冗談です」
冗談に聞こえないんだけど……。
「まぁ、滅ぼすのは場を和ませる冗談だとしても信仰心が少なくなっているのは事実ですね」
「和ませるどころかむしろ掘り進めたような気がするけど……」
「まぁ、神が介入することではありませんから。神は人だけに肩入れするのもいけませんからね」
と、アルテナ様は笑うがこの場の全員笑えやしなかった。
未だに冗談だとわからない人が多く慌てふためいているし、本当に滅ぼす気なのかそうでないのか計れないひとが多い。
あの、冗談が長すぎますよ……。
「……場が和んでませんね。ウリエルたちが仲良くなりたいのなら冗談を……といってたのですが」
「冗談は冗談でも洒落にならない冗談やめてください。あなた冗談を可能にする力があるんですから……」
この人本当に天然だ……。
本当に滅ぼすつもりはないけれど怒っているのは事実かもしれない。そういうこと。滅ぼす気はないけれど怒っているのは本当……ということかな。
本当に洒落にならない冗談……。行き過ぎるともはや脅迫だし……。
「難しいのですね」
「そこまで難しくはないと思うけど……」
私がツッコミをいれていると恐る恐る信者の人が手を上げた。
「ど、どこまでが本当なのでしょう……」
「……冗談が通じないのですかこの国の人?」
「洒落にならない冗談を言うアルテナ様が悪いですね。すべて冗談ですよ。アルテナ様は滅ぼす気はありませんから」
信者の人たちがほっと息をついた。
アルテナ様冗談のラインわかってない……。滅ぼすことが実際に可能だから怖い。
まぁ、冗談かどうかはさておき……