郊外の孤児院 ①
私は今、アルテナ様を讃える宗教の教会に来ている。
ものすごくデカい建物であった。見上げるほど高いのでここがアルテナ様の宗教の総本山なのかな。とりあえず中に入ろう。
入り口近くまで行くと箒で砂埃を掃いていたシスターさんが近寄ってくる。
「お参りでしょうか?」
「え? まあそんなところです」
「そうですか。お参りならばこちらではなくあちらの入り口からお入りください。こちらは孤児院の出入り口でございますので」
「あっ、はい」
ここが孤児院……?
すごい。あちらと指さしたのは小さい建物だった。ランクは駄々下がりでおり普通の教会みたいなサイズだった。
ええ、普通逆じゃない? と思う。
「なぜ孤児院のほうが建物が大きいのか疑問に感じておられますか?」
「えっ、よくわかりましたね」
「旅人はいつも聞いてきますから。アルテナ様は自分の身を賭してまで民を守る神だとされておりました。ある司祭が神の言葉を授かったそうで。『私の建物は小さくていいのでその分のお金を貧困な人々に分け与えなさい』とのことでした」
……たしかに人思いな神様ではあるけれど。
そんなこというかね? ああみえて『勝手にやってください』って感じの神様なんだけど昔は性格が違ったのかな?
「なのでまずはこの国一番の問題である孤児を解決しようとしたのですが……思った以上に多くなってしまいこの孤児院ですらいっぱいになるのです」
「なるほど……。ちなみになぜそんなにも孤児が多く?」
「冒険者ですね。子供を産んだ後夫が冒険者として稼ぐのですが死んでしまい、妻も何とかして稼ごうとするのですがお金を稼ぐ術は知らず、育児を放棄してしまうことが多々あるそうです」
冒険者……か。
たしかに冒険者は子孫を残すということもあるのかもしれないけれどさすがに死にすぎじゃないですか? この孤児院でいっぱいになるなんて相当だと思うけれど……。
「子供を産むのはいいのですが産んだ以上は責任を持ってもらいたいものです」
シスターさんはそうつぶやいていた。
今の日本でも育児とか問題になってるからな……。
「それにしてもいつもなら元気よく外で走り回る子たちが出てきませんね。中で何しているんでしょう」
「なら私が見てきますよ。興味がわいたので」
「お願いしてもよろしいですか? 私はここらへんの掃除をしないといけないので」
と、中に入ろうと扉を開けた。
アルテナ様が子供を宙に浮かべて遊んでいた。私はそっと扉を閉めた。
「どうしたのですか?」
「なんか見てはいけないようなものを」
「そんな……。魔物でも入り込んだのですか?」
と、シスターさんが扉を開けてそっとしめた。胸を押さえている。箒は投げ捨ててしまい、その場に座り込んだ。
「見間違いですよね? こんな王都っていっても郊外にあるような教会にアルテナ様が来てるなんてことないですよね?」
「…………」
あれはどうみてもアルテナ様だったような気がするが。
なんでいるんですか。なんで私のいるところにたまに湧くんですか。そんなに私を追いかけているのですか?
「そうです。何かの間違いです。アルテナ様が……」
「呼びました?」
「ふわあああああ!?」
目の前に現れた。
シスターさんは失神した。あまりにもインパクトが強すぎたんだろうな……。
「いたずらのつもりで現れたのですがまずかったですか?」
「なんでまたいるんですか……」
まずなんでいるのか教えて?
アルテナ様またいる。