スラムのスライム ②
とりあえず精霊魔法を打つ。あっ。スライム終了のお知らせが見えた。
レベル差もレベル差なのでものすごく削れたし、魔法耐性は本当にないので一発で瀕死になっていた。耐えているのは単純に体力がバカ多かったからだろう。
とりあえずおしまい。
スライムがA2Oで強敵といわれる理由は大体みんな剣士とかを選んでいるから。魔法使いもいなくはないが剣士の比率が多いらしい。
「終わりました」
「……はぁ?」
と、男に報告すると男は倒れたスライムを見て驚いていた。
なんでこれに苦戦するのかといえば、多分触れてはいけないというのがでかかったんだろう。私がステータスがバカ高いのもあるかもしれない。
まりょくも本当にバカ高いから……。
「……お前何者だ」
「ただの冒険者ですよ」
「Bランクですら倒せなかったスライムを一撃だと?」
「まぁスライムは魔法使ったら弱いですから」
「嘘をつけ。ダストスライムは魔法耐性もある。魔法使えたとしても無意味だ」
と、いっていた。
この国では魔法使える人が少ないとかいってたし倒せないだけだと思ってたんだけれどどうやら魔法使いの人も魔法を打ったらしい。それで効いていなかった……。精霊魔法だからだろうか。
精霊魔法と魔法は同じもの……と考えていたけれど、どうやら魔法耐性ある敵にも通用する……とか? いや、それか耐性があっても無意味なくらいに大ダメージを与えたんだろうか。
「ま、まぁ、いいじゃないですか。倒せたんですし」
「……そうだな。助かった」
素直にお礼を言ってきた。
「……で、なにがあったんですか。このスライムが生まれた原因は?」
「ああ。説明してやる。うちにこい」
と、案内されたのはお世辞でも綺麗とは言えないような家だった。
中に入ってぼろい座布団に座る。座布団からは埃が立った。
「……さて、まずは俺らを追い出すということだな」
最初に言ったあのセリフ。
なんだったんだろう。あのセリフは……。
「実は最近国の動きがきなくせえ。どうもスラムを排除しようとしているみたいだ」
「スラムを排除?」
「ああ」
スラムを排除しようと……。国が? アドバンス王国みたいな善良な国……ではないらしい。スラムがある時点で貧困層が明確に分かれている。
なるほど。たとえ貴族がいい人でも国がいいとは限らないわけだ。
「スラムを排除するメリットはあるのですか?」
と、ソゥ様が訊ねた。
「奴隷が増える」
「奴隷……?」
「奴隷は人間ではなく物扱いだ。売られたら最後。殺してもなぶってもいい。好きな風にできる人間玩具といったところだ」
「……」
ソゥ様は絶句している。
たしかに聞いていて気分がいい話じゃない。スラムを排除しスラムにいた人間は奴隷となって貴族に買われて……。殺されても文句は言えない。
スラムといえど最低限の人権は保障されてるのかもしれない。
「だがしかし、ある事実を隠ぺいするためでもある」
「ある事実?」
「それがあのスライムだ」
あのスライム? あれが国と関係するのだろうか。
「あのスライムが国と……?」
「ああ。あのスライムが生まれたのは……国のごみのせいだ」
……ゴミ?
「国中のごみがこのスラムで焼却された。いや、ゴミだけじゃねえ。人の死体もあった。それがスラムで焼かれた」
「……そのゴミから生まれたんですか?」
「ああ。あのごみは国が作ったもの。それがばれたら批難を受けるということを悟ったんだろうな。だからゴミのこと、スライムのことを知っている俺らを排除しようとしている。事実をもみ消したいだけだ。国は」
……ちょっと待ってよ。
だとすると、あのギルド長の言葉はどうなんだ?
「冒険者ギルドは国が運営している。もみ消したいのなら私に依頼せず倒せばよかったのでは?」
「自分の国の兵力を減らしたくないんだろう。冒険者なのだから一人や二人死んでも構わないという判断だろうな。だから冒険者に依頼した」
「なら、ギルド長はそれを私に依頼した……」
「……利用された?」
「わけでもない。実際国の困ることだしそれに、あの依頼は取り下げるつもりだったはずだ」
「え?」
取り下げるつもり?
「ギルド長とは旧知の仲だ。この前奢ってもらったときに聞いた。スラムのスライム。あれを国をあげて討伐しようと猛抗議していた。なら、いっそ取り下げて討伐しないまま国を困らすとか言っていたほどだ」
……ならなおさら私に依頼する意味が分からない。倒してしまえば国の利益になるだろうに。
そんな疑問を抱く。
「……国の利益になることでもしなくてはいけなかったのは倒さないとスラムが困るからだ。取り下げていればいずれかは国が嫌々討伐するだろうという魂胆もあったかもしれないが、倒すのは早めにしておいたほうがいいと判断したんだろうな。国を待つか、倒せそうな人物を探すかをえらんだんだ」
なるほど……。
取り下げて国に倒させたいけどなるべく早く倒してほしかったということもあるのか。
「……なら緊急依頼という形は不可能だったんですか?」
「そうだな。緊急ということは急ぎを要するということだ。なぜ急ぐ必要があるのか、それに気づく人もいるかもしれない。国が圧力をかけたんだろうな。緊急ではなく普通の依頼にしろ、と」
国最悪だな……。
私の国への印象が悪くなってしまった。
スラムのスライムをつくったのは国であるけれどそれをもみ消そうとしているってことですね。