夜の探検 ①
「なんとお礼を言えばいいのかっ……!」
ゼウス様はヘラさんの手を握りながら私のほうを見る。
ものすごい笑顔だった。裏表もないような笑顔を見れた気がする。少年もお母さんの横に行って喜んでいた。……まぁ、ちょっと気分はいい、かな。
「本当にっ……! ありがとうございます。また、明日から……頑張ることができます」
「…………」
と、ゼウス様の胸元が光った。その光は見たことがある。想いの種……。想いの種が生まれ、私の中に吸収されていった。
ゼウス様も驚いていて、私のほうをじっと見ている。
「想いの種……ですか」
「……ええ」
「……そうですか。想いの種……。集めれば世界が変わるといわれているもの。あなたなら、きっと悪用はしないと信じます。私の想いを託しました」
「受け取りました」
想いの種……。人々の思いが世界を紡いでいくということなのかもしれない。
よくわかってはいないから、図書館かどこかできちんと調べる必要があるかもしれないな。想いの種とはなにか、どういう効果をもたらすのか。
いろいろと考えることが山積みだァ……。
「では、私は帰りますね」
「……泊っていってもよろしいのですよ」
「いえ。少しやりたいこともあるので。あと、友人を待たせておりますから」
「そうですか。ならばお送りいたしましょう」
「カリオス伯爵様の屋敷までお願いできますか?」
「かしこまりました」
馬車で送ってもらって、屋敷の中に入る。が、もう夜遅く。誰もが寝静まっている時間だった。
さすがに家に入るのはちょっと道徳観的にどうかと思うし外で一夜過ごそうと思う。調べたいこともあるしね。王都をまず散策でもしようかな。
王都は四つの地区に分かれている。
まず、貴族が住む貴族街。商会の本部などがある商業街。平民が住む平民街にスラム。スラムはお金もない人たちの集まりであり、商業街にいっては盗みをしたりなどしていて無法地帯だということだ。彼らも立派な国民であるがため裁くにも裁けない。
ただ、普段の行いのせいかスラムの人たちは人間のように扱われてはいない。奴隷落ちによくなったりするという。
奴隷、ねぇ。この国でも奴隷制度はあるらしい。クー・フーリンみたいな掘り出し物はいないのかな。っていうか、異世界に奴隷もつきもの……。
「夜って結構危ない雰囲気があるけど……大丈夫か」
私の目的は探索。
一日ですべてを回り切れるとは思わない。なので、数日にわたって王都を散策しようと思う。夜のスラムは危ないだろう。
とりあえず商業街かな?
じゃあ、商業街へレッツゴー!